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新型コロナワクチン接種後の抗体価に対する感染の影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン後の中和抗体の差.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年4月14日掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症の既感染者が、
ワクチンを接種した場合の免疫反応についての報告です。

日本でも少しずつ、
新型コロナウイルスワクチンの接種が開始されていますが、
そこで1つ問題となるのは、
明確に新型コロナウイルス感染症に罹患した人が、
ワクチンを接種することに意味があるのだろうか、
という点です。

この病気が一生に一回しか感染しない、
というものではなく、
一度感染すれば一定期間は感染しないものの、
時間が経てば再感染するという性質のものであることは、
ほぼ間違いのない事実と考えられています。

そうであれば、
既感染者でも追加でワクチンを接種することにより、
抗体の反応を高め、
予防効果を持続させることが可能ではないかと思われます。

しかし、
実際に感染したことのない人がワクチンを接種した場合と、
数ヶ月以内に感染した人がワクチンを接種した場合とで、
どのような差があるのかは、
現時点では明確ではありません。

今回のミニレポートでは、
新型コロナウイルス感染症の既往のある37名に、
ファイザー社のワクチンを1回接種して10日後と、
これまで感染していない62名に、
同じワクチンを2回接種して10日後の血清を採取し、
その中和抗体価を比較しています。

その結果、
既感染者が1回のみワクチンを接種した後の中和抗体価は、
未感染者が2回ワクチンを接種した後の中和抗体価より、
有意に高くなっていました。
また、既感染者をその感染からの期間により、
1から2ヶ月以内、2から3ヶ月以内、3ヶ月より以前、
で分けて検討したところ、
有意ではないものの、
3ヶ月より以前の感染者の方が、
より中和抗体が上昇している傾向が認められました。

以上を図示したものがこちらになります。
ワクチン後の中和抗体の差の図.jpg

要するに、
感染後3ヶ月以降くらいのタイミングで、
ワクチン接種を行うと、
通常より高い中和抗体活性が期待されるので、
そうした患者さんでは、
1回のワクチン接種で必要にして充分と、
そう考えて良いようです。

変異株でも同様の現象があるのか、
というような点についてはまだ不明ですが、
今後こうしたデータが蓄積されることにより、
ワクチンの適切な接種スケジュールが、
確立されることに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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