SSブログ

極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年4月30日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。

今日は新型コロナウイルス感染症の、
クリニック周辺に限った近況です。

矢張り若い人を中心に感染が増加している、
という傾向はクリニック周辺でも見られていて、
現状はインフルエンザ様症状での発症が多い、
という印象です。

突然の発熱と関節痛、寒気というような症状で発症し、
熱自体はそれほど持続しないのですが、
全身倦怠感や頭痛、関節痛は長く持続する、
というような症状です。
咽頭痛はあることの方が多いのですが、
軽症のことも多く、
咽頭後壁の発赤もそれほど強くはありません。

味覚障害や嗅覚障害の話も、
最近はあまり聞くことがありません。
ただ、これは発症する事例が減っているのか、
それとも発症する前に診断されるケースが多くなったからなのか、
その点については何とも言えません。

時々昨年あったような、
咳き込みと呼吸困難と高熱、
というようなケースに遭遇しますが、
そうした事例は概ね重症化して、
緊急入院となることが多いのです。
ただ、比率から言えば若年の軽症例が、
圧倒的に多いという印象です。

若年の感染者から急速に周囲に感染が拡大している、
というのが現状の間違いのない傾向であるようです。

最近印象的であった事例は1人は20代の女性ですが、
品川区内の電話応対の多い会社に勤務していて、
その会社では1週間ほど前から発熱者や、
咳などの風邪症状の人が増えていたのですが、
会社からの命令で、
「絶対にPCR検査を受けるな」と言われていたとのことです。
本人の症状としては微熱とだるさと軽い咳で、
初診時には本人が、
「会社から止められているので」
と検査をしませんでしたが、
翌日だるさと関節痛が悪化したため再診。
本人の承諾も得られたので検査をして陽性を確認しました。

それからこれは別のケースで30代の男性会社員ですが、
羽田からそう遠くない場所で勤務していて、
その会社では熱が出ると、
「羽田空港のPCRセンターに行って、すぐに結果の出る検査をして来い」
という指示が出るのだそうです。
それでその人も発熱と関節痛と寒気があったので、
木下グループのやっているPCRセンターに行って、
抗原検査を受け、陰性であったので、
陰性証明書のようなカードをもらって帰って来たのです。
初診の時点ではその日に抗原検査で陰性とのことであったので、
処方のみで経過をみたのですが、
翌日に症状が悪化したため再診。
同日唾液のRT-PCR検査を施行して陽性を確認しました。

特にこうした若い会社員の方の傾向としては、
会社からは「無断で医療機関でPCR検査をするな」
という命令を受けていて、
受診をされて検査の必要性が高いとお話をしても、
「まず会社に連絡をします」とその場で会社に電話やメールをし、
それで30分くらい平気で時間が経過してしまう、
というケースが多いのが実際です。

「会社」というのはどうやら物凄い権力を有してるらしく、
僕のような末端の医療機関の医者が何を言っても、
到底太刀打ちは出来ない伏魔殿のような場所であるようです。

感染の原因は、
聞き取りが可能な範囲では、
矢張り「会食」などの外食が多いのですね。

直近ではラーメン屋さんで感染した、
と思われる事例が2件ありました。
(ラーメン屋さんが特に悪いということではありません。
そうした事例がたまたまあった、
ということでご理解下さい)
ただ、飲食の仕事をされている方は、
「自分の店では徹底した対策をとっているし、
これまでうちの店で感染者が出た、
という話を聞いたことがない」
というように決まって言われるんですね。

それはもっと感染が散発的状態であれば、
確かにそうかも知れないのですが、
たとえば感染がほぼほぼある飲食店で起こった、
と分かっていても、
患者さんもあまりそのことを言わないですし、
犯罪ではないので、
医療機関も保健所もそこまで追求するようなことはしません。
そうすると、結局多くは「感染経路不明」ということになって、
その飲食店の関係者が、
自分の店でお客さんが感染した、
というような事実を知ることはないんですね。

要するに、
「こうした感染が市中に蔓延した状態では、
複数人で外で食事をすれば、
どんなに対策していても感染リスク自体はある」
というのが事実であると思うのですが、
多くの人にとって、
それはあまり理解したくはない考えなので、
理解はされないのだと思います。

事例を分析している時点までは、
それは一応科学の範疇なのですが、
それを公表したり議論したりした時点では、
それはもう社会学や政治の問題になってしまうんですね。

散発的な感染の時に取るべき対策と、
市中感染で流行期に入った場合に取るべき対策とは、
明確に異なっている筈ですが、
一般の方はそれを完全に混同していますし、
専門家と称する方でも、
やや混同した発言をしている傾向はあるので、
話はややこしくなっています。

そんなこんなで先の見えない状況が続いていますが、
日々の診療をこなしつつ、
発熱外来などで自分の出来ることを、
無理のない範囲で続けてゆきたいと思います。

ちなみに僕自身のワクチン接種は、
1回目が5月12日の予定。
僕が嘱託医をしている老人ホームは、
5月17日に1回目の入所者のワクチン接種の予定。
品川区では5月20日くらいから、
一般の高齢者の接種も、
少しずつ開始される予定です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)