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新型コロナウイルス感染症に有効な予防薬はあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの予防薬.jpg
British Medical Journal誌に2021年4月26日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予防薬についてのメタ解析の論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療は、
現状有用性が明確なのは、
重症の事例におけるステロイド治療のみで、
抗ウイルス剤のレムデシビルが、
こちらも重症の事例のみで若干の有効性が期待される、
という程度です。

つまり、軽症から中等症の事例で、
明確な効果のある薬剤は確認されていません。

また、現状の日本のように、
市中感染が拡大しているような状況では、
濃厚接触者や、
濃厚接触とまではいかなくても、
感染のリスクが高い対象者に、
予防的に使用するような薬が、
感染防御と社会活動を両立させるためには、
非常に必要性が高いのですが、
ワクチン以外の予防薬も、
現状では明確に有効性の確認されたものはありません。

今回の研究は、
これまでの精度の高い介入研究のみをまとめて解析した、
システマティックレビューとネットワークメタ解析で、
最新の手法を用いて、
新型コロナウイルス感染症の予防薬の候補を、
比較検証しているものです。

その結果、
9つの介入試験がネットワークメタ解析の対象となり、
そのうちの6つの試験はヒドロキシクロロキンを対象としたもので、
1つはイベルメクチンとカラギーナン点鼻の併用、
2つはイベルメクチン単独の予防効果を検証したものでした。

ヒドロキシクロロキンはマラリア治療薬ですが、
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用があるとされ、
治療と予防の双方で臨床試験が行われています。
イベルメクチンはマクロライド系抗菌薬の一種で、
寄生虫症の治療薬として使用されている薬剤ですが、
基礎実験において多くの抗ウイルス作用を持つことから、
こちらも予防薬として期待されているものです。
カラギーナンというのはゲル状の多糖類で、
食品添加物ですが、
そのウイルス吸着作用を期待して、
スプレーとして鼻の粘膜に噴霧して、
感染を予防するという期待から、
イベルメクチンと併用された介入試験が存在しています。

解析の結果、
ヒドロキシクロロキンの使用は、
明確に新型コロナウイルス感染症を予防したり、
入院や死亡のリスクを減少させるような効果は、
確認されませんでした。
(あるとしても僅かな有効性か、もしくはないか、という表現です)
その有効性はほぼないと判断される一方で、
消化器症状などの有害事象で治療が継続されないケースは、
その有用性を明らかに上回っていました。
イベルメクチンについては比較的小規模のデータしかなく、
その範囲では明確な効果は確認されませんでした。

最近吸入ステロイドで軽症事例の予後が改善された、
という報告はあり、
そちらは少し期待したい部分はありますが、
その有効性と有害事象とのバランスから考えて、
ヒドロキシクロロキンとイベルメクチンの現状での予防効果は、
精度の高い臨床試験においては確認されていない、
というように理解して大きな問題はなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「キス」(飴屋法水×山川冬樹) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
キス.jpg
2021年の4月17日から20日に、
北千住の元風呂屋というイベントスペース「BUoY」で、
演劇の孤高の天才、飴屋法水さんと、
パフォーマーの山川冬樹さんによるコラボ公演が行われました。

ツィッターで告知を見て、
これは絶対行かないと後悔するやつじゃん、
と思い無理して出掛けました。

北千住は僕の守備範囲からはかなり遠いんですよね。

ここは来るのは3回目で、
一度目はゴキブリコンビナートの本公演で使用され、
二度目は2階の方で庭劇団ペニノのVR公演が行われました。

凄いメンツでしょ。

確かに魅力のある場所なんですね。
地下のイベントスペースは元風呂屋を、
そのまま打ちっ放しの地下空間にしたもので、
中央に太い柱があるので、
普通の劇場的に使用するのは難しいのですが、
昔のジャンジャンや文芸座ルピリエを大きくしたような雰囲気で、
アングラなイベントには絶好のダークな感じです。
また、以前のマンホールがそのまま残っていて、
それをそのまま使用することが出来るんですね。
これは最高です。

飴屋法水さんは小劇場演劇の孤高の天才で、
その雰囲気も含めて、
今ではもう生ける伝説のような人ですよね。

最近は他のアーチストとのコラボ的なイベントが活動の主体で、
通常の演劇公演のようなものは、
殆どされていないのが残念ではあるのですが、
こうしたイベントも充分刺激的で、
唯一無二の体験が待っています。

もう結構お年なのに、
相当乱暴者でもあるんですね。
数年前のおアゴラ劇場の公演では、
フェンシングのマスクを被って登場して、
その中に沢山の爆竹を放り込んで爆発させたんですよね。
電撃ネットワークも顔負けでしょ。
呆然としました。

今回は新型コロナがテーマで、
人工臓器を載せた自走式のロボットが、
舞台を動き回っていて、
飴屋さんの子供のくるみさんが、
沢山のマスクを盥の水に濡らして、
それから斜めに張られたヒモに1つずつ吊して行きます。
壁には1990年代に、
シャーレに皆で咳をして、
飛沫を培養して喜ぶような、
今では背筋が凍り付くようなイベントをしている画像が、
エンドレスで流れています。

これだけでもう本当にワクワクしますよね。

こうした組み合わせのバランスと異様さ、
そして不穏な空気感の醸成の仕方が、
まさしくアングラの血脈なのです。

それからマスクを吊していたロープが落ちると、
くるみさんが新型コロナの昨年からの経緯を、
年代記的に読み上げ、
それに連れてマンホールの闇の底から、
ガスマスクやダイヤモンドプリンセス号の模型など、
色々な物が水を滴らせながら引き上げられ、
山川冬樹さんは逆さ吊りになり、
足を縛ったロープで、
下水の底から引き揚げられます。
これはもう最高ですよね。アングラ万歳の奇観です。
それから飴屋さんは目立たないように、
マンホールの底から這い上がって来ます。

山川さんは音楽を演奏し、叫び、
飴屋さんとチューブで繋がれたガスマスク姿で格闘し、
最後は一緒にマンホールから地の底へと消えて行きます。

最後に少女2人がキスをしている絵の話を飴屋さんがするのですが、
パフォーマンスが終わって外に出ると、
出口のところにちゃんとその絵が飾ってあります。
この辺のセンスも素晴らしいなと感心しました。

内容はね、コロナの話なので、
言わんとすることはいつもより分かるのですね。
飴屋さんと山川さんでディスカッションみたいなこともしますし。

ただ、僕も医療従事者の立場で考えるので、
正直あまり相容れない感じのお話ではありました。

前半でしたか、
山川さんが2020年の緊急事態宣言の時に、
早朝1人で公園に行って運動して、
それが楽しかったとツィートしたらディスられた、
というような話をしていて、
単純に生活の息苦しさを誰かのせいにしているような言説に、
モヤモヤするものを感じてしまいました。

飴屋さんの語りはコロナのことを、
もっと大きな生と死の話、
愛は奪うものでもある、というような話に、
変換してゆくようなレトリックなのですが、
それもちょっとすり替えのようで、
ずるいようにも感じました。

まあこの辺は、立場が違うと感じ方も違うので、
それはもう仕方がないですよね。

パフォーマンスも演劇も大好きなのですが、
そうしたお仕事に関わる方が、
このコロナ禍の時に考えていることには、
正直とても違和感はあるし賛同も出来ないんですね。

困ったなあ、そんな風に考えるなんて。
もう少し他の人の立場にも立って考えればいいのに、
というようには思うのですが、
僕も僕の立場で考えているだけですし、
それはもう所詮人間というのはそうした立場に縛られる生き物なので、
愚痴っても仕方もないことなのかも知れません。

そんな訳でテーマにはモヤモヤしたのですが、
飴屋さんの天才が健在であることを、
再確認させられた素敵なイベントで、
行けて良かったと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の再感染率(デンマークの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症の再感染率.jpg
Lancet誌に2021年3月17日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の再感染率についての論文です。

先日はアメリカ海兵隊の新兵のデータをご紹介しました。
そこでは一度新型コロナウイルス感染症に感染すると、
その後の再感染は82%予防された、という結果が報告されています。

今回のデータは、
国民の69%に当たるおよそ400万人が、
新型コロナウイルス感染症のRT-PCR検査を施行されたデンマークで、
その後の再感染率を計算したものです。

第1波とされる2020年6月以前の期間に、
533381名がRT-PCR検査を受け、
そのうちの2.11%に当たる11727名が陽性となっています。
その後の第2波まで525339名は観察されていて、
第1波で陽性で第2波まで観察された11068名のうち、
0.65%に当たる72名が、
再度RT-PCR検査で陽性が確認されました。
一方で第1波で検査陰性で第2波でも検査を施行した514271名のうち、
RT-PCR検査で今度は陽性となったのは、
3.27%に当たる16819名でした。
ここから、一度感染することにより、
その3か月以降での再感染予防効果は、
80.5%(95%CI:75.4から84.5)と算出されました。

別個の解析法により、
感染のリスクを3か月以上前の感染のあるなしで、
分けて解析しても、
この再感染予防効果は、
78.8%(95%CI:74.9から82.1)と、
ほぼ同等の結果で算出されました。

ここで性別と再感染予防効果との間には、
明確な差はありませんでしたが、
年齢について見ると、
65歳以上での再感染予防効果は、
47.1%(95%CI:24.7から62.8)と、
明確に低くなっていました。
初感染からの時間で見ると、
3から6か月が79.3%で、
7か月以上が77.7%と、
若干期間と共に低下する傾向はあるものの、
明確なものではありませんでした。

これは国民総背番号制のデンマークのデータなので、
例数は圧倒的ですし、
米国海兵隊のデータとは違い、
年齢の差も解析されているのが特徴です。

結果はトータルでは海兵隊のデータと一致していて、
新型コロナウイルス感染症に感染すると、
その後しばらくの再感染は8割程度は予防され、
罹り難い状態にはなるけれど、
絶対に罹らないという訳ではない、
ということが分かります。

また、今回のデータでは65歳以上では、
再感染予防率はより低く5割弱ですから、
高齢者は一度罹っても、
2度罹ることは稀ではなく、
ワクチン接種ほどの効果もない、
という結果になっています。

このデータはしかし、
変異株のことは考慮はされていませんし、
稀に3か月を超えてRT-PCR検査が陽性を持続することがありますが、
その検証はされていないので、
再感染事例とされるものが、
全て本当に別のウイルスに感染したものなのか、
という点は実証されている訳ではありません。

ただ、いずれにしても、
このウイルスが一度罹ってそれで安心、
というようなものではないことは確かで、
一度感染された方も、
現状は感染したことのない方と同じように、
感染予防には気を付けて頂く必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリンと経口抗凝固剤併用治療のリスクと有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンと抗凝固剤の併用治療.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年4月19日ウェブ掲載された、
アスピリンと直接作用型経口抗凝固剤の併用による、
有害事象と効果を評価した論文です。

アスピリンは心血管疾患の二次予防などに、
広く使用されている抗血小板剤です。

一方で心房細動という不整脈における、
脳塞栓症などの予防や、
下肢静脈血栓塞栓症における、
肺血栓塞栓症の予防などには、
抗凝固剤という、
より強力に血液の凝固を抑える薬が使用されます。

古くから使用されているのが、
注射薬のヘパリンと経口薬のワルファリンで、
最近その利便性からその利用が増えているのが、
直接作用型経口抗凝固剤と呼ばれる薬です。
プラザキサやイグザレルト、エリキュース(いずれも商品名)、
などがそれに当たります。

仮に心房細動の患者さんが心筋梗塞を起こしたり、
心臓の弁置換術を行ったような場合には、
より強力な抗凝固療法が必要との観点から、
アスピリンと経口抗凝固剤を併用することもあります。
こうした併用は出血のような合併症のリスクを高めるのですが、
それ以上に血栓症のリスクが勝る、
という判断があるからです。

ただ、これは欧米でより多い現象であると思いますが、
この基準を満たさない事例であっても、
心房細動や静脈血栓症でリスクの高いケースでは、
それだけでアスピリンと経口抗凝固剤が併用されることが、
多いのが実際であるようです。

これまでの臨床データにより、
ワルファリンとアスピリンの併用は、
ワルファリン単独使用と比較して、
出血リスクが高まることが示されています。

しかし、直接作用型経口抗凝固剤とアスピリンの併用については、
そのような検証がまだあまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの4カ所の専門クリニックにおいて、
心房細動や静脈血栓塞栓症のために、
アスピリンと直接作用型経口抗凝固剤を併用されていて、
心筋梗塞の最近の既往や人工弁の手術などの既往のない1047名を、
他の条件をマッチさせた直接作用型経口抗凝固剤のみ使用の1047名と、
その経過を比較検証しています。

その結果、
平均で20.9ヶ月の経過観察期間において、
出血系の合併症は、
抗凝固剤単独では年間患者100人当たり26.0件に対して、
アスピリンとの併用療法では31.6件で、
併用療法では有意に出血系合併症が増加していました。
一方で塞栓症の発症は、
両群で有意な差がありませんでした。

要するに、
特別な場合を除き、
心房細動や静脈血栓塞栓症の塞栓症予防には、
経口抗凝固剤の単剤で充分で、
アスピリンとの併用は出血系合併症を増やす上に、
その予防効果には差がないので、
使用にはより慎重であるべきではないか、というのが、
今回の臨床研究の結果となっています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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mRNAワクチン接種後感染事例のゲノム解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン無効変異ウイルスの事例.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年4月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン2回接種後の感染事例の報告です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー社とモデルナ社による2つのmRNAワクチンについては、
稀に生じるアナフィラキシー以外、
特に問題となるような有害事象も少なく、
その有効性は有症状の発症抑制で90%を超えるデータが、
確認されています。

ただ、この高い有効性は、
敢くまで従来型のウイルスによる感染が、
主体である場合の話です。

英国型と呼ばれる「B.1.1.7」変異株では、
それほど違いのない有効性がありそうですが、
それ以外の変異株に対する有効性は、
散発的データはあるもののまだ明確ではありません。

特に南アフリカ型やブラジル型の変異株に認められる、
E484K変異は、
他のウイルス株による中和抗体を無力化するとされ、
ワクチンや従来株による免疫が、
有効ではない可能性が示唆されています。

今回のデータはニューヨークにおいて、
ファイザー社もしくはモデルナ社のmRNAワクチンの2回の接種を終えた、
417名のその後の経過を観察したもので、
2回の接種後2週間以上が経過した時点で、
2例の新型コロナウイルスの、
有症状感染事例が確認され、
その事例を解析したものです。

この時点でニューヨークでは、
新規感染事例の72%が変異株による感染で、
26.2%は「B.1.1.7」変異株による感染、
42.9%はニューヨークで独自に発生したとされる、
「B.1.526」変異株による感染と報告されています。

ワクチン無効例の1例目は健康な51歳の女性で、
モデルナ社のワクチンを2回接種し、
その19日後に咽頭痛と発赤、頭痛が出現し、
新型コロナウイルス感染症と診断されました。

2例目も健康は65歳の女性で、
ファイザー社のワクチンを2回接種し、
その35日後に全身倦怠感や結膜充血、頭痛で発症しています。
同居するワクチン未接種のパートナーからの感染でした。

この2例の感染ウイルスの、
ゲノム解析の結果がこちらです。
ワクチン無効変異ウイルス解析表.jpg
この2名の患者は、
T95I、del142-144、D614Gという3種類の変異を共に有していて、
事例1のみE484K変異が認められています。

これはいずれもニューヨークで流行している変異株とは、
性質の異なる別の変異株で、
これが別個の流行株であるのか、
それとも突然変異的なウイルスに過ぎないのか、
その点はまだ明確ではありません。

現状新型コロナウイルス感染症の征圧のためには、
変異株の広がりを的確に把握し分析する体制と、
ワクチン接種の着実な進行との2本柱が何より重要で、
現状そうした対応が日本においてどの程度実行されているかは不明ですが、
体制の充実を是非に望みたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
記載に不正確な点がありました。
コメント欄でご指摘を受け修正しました。
(2021年4月26日午前9時修正)
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「るろうに剣心 最終章 The Final」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
るろうに剣心.jpg
るろうに剣心の実写映画化のシリーズ完結編が、
2部作として製作され、
その前編「最終章 The Final」が今公開中です。

4月23日公開なのに、
25日から非常事態宣言で上映中止です。
昨年から公開をずらしてこれですから、
本当に無念だろうなあ、とは思います。

これは予告では前編と後編で完結する、
という感じに思えますが、
「京都大火編」のような感じではなくて、
今回の作品はそれはそれで完結していて、
後編は「The Beginning」と題されて、
今回の物語の源流にある過去の物語になる、
という趣向であるようです。

これは19世紀後半のヨーロッパ娯楽小説のパターンで、
当時のミステリー小説は、
2部に分かれていて、
1部は現代の事件とその解決を描き、
2部はその原因となった過去の事件を描く、
というのが定番だったのですね。
名探偵ホームズの長編も、
多くはこのパターンで書かれています。

今回の映画の2部作というのは、
それをそのままやっているんですね。
前半が結果として失敗に終わる復讐劇の顛末で、
これから公開される後半は、
その復讐劇の原因となった事件を描く、
という、もうもろに典型的な構成です。

今回の前半はなかなか楽しく鑑賞しました。

アクションがいいですね。
物凄く目まぐるしいのですが、
静と動のコントラストが巧みに構成されているので、
動体視力の落ちた僕のような年寄りにも、
それほどストレスなく観ることが出来ます。

ただ、お話はかなり薄っぺらで安っぽく、
特に意外な展開などはないので、
全ては予定調和的に展開して心が沸き立つことがありません。

まあでも、これは僕のような観客向きに、
作られた映画ではないので、
文句を言うのが野暮であるのかも知れません。

また、予算的な問題だと思いますが、
セットは殆どが「映画村」という感じで、
もっと映画を象徴するような風景というか、
俯瞰の堂々たる絵が、
もう少し欲しかったな、という気がしました。
ドラマの部分は基本的に「テレビサイズ」という感じでした。

いずれにしても、
日本での漫画の実写化を代表するシリーズであることは確かで、
後編の公開も楽しみに待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「シブヤデアイマショウ」(松尾スズキ演出 大人の歌謡祭) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
シブヤデアイマショウ.jpg
松尾スズキさんが総合演出を務め、
ミュージカルナンバーの替え歌主体の歌謡ショーに、
お芝居やギャグパートを絡めた、
松尾流エンターティンメント歌謡ショーが、
今渋谷のシアターコクーンで上演されています。

何かの穴埋めの企画であるのは明らかですが、
これは文句なく楽しかったですね。
席も良かったので、
とても贅沢な気分になることが出来ました。

これね、お芝居としては、
実際と同じコクーンの芸術監督で登場する松尾さんが、
「悪の松尾」に堕落してしまうのですが、
最後は盟友の秋山菜津子さんに殺されて、
復活することによりお芝居への純な心を取り戻す、
というお話と、
能年玲奈さん(現のんさん)演じる、
お手伝いさんを孕ませた地方のおぼっちゃんの少年が、
渋谷で演劇関係の仕事をすることで、
過去の自分を精算する、
というお話が軸としてあり、
そこにミュージカルの楽曲やゲストコーナー、
演芸、歌舞伎パロディなどが、
歌謡ショーとして配置される、
という構成です。

これは松尾さんと天久聖一さんのコンビが、
良いバランスで機能したな、という感じがします。
ダークサイドに堕ちた藝術家が、
死んで復活することにより再生するという趣向も、
少年が過去の性癖に由来する悪事に苦しむというのも、
これまでの松尾さんの劇作ではお馴染みのものです。
ただ、過去作ではそれをかなり扇情的かつ露悪的に、
ある種悪趣味上等というような感じで描いていたのですが、
今はそうした表現があまり容認されない世の中なので、
今回は至って穏当な表現に終始しています。

でもそれであまり物足りない感じはなかったんですね。
松尾さんの変な動きも見られたし、
アングラ担当の宮崎吐夢さんも、
いい感じの彩を添えていました。

後は何と言っても能年玲奈(のん)さんですね。
素晴らしかったですね。
何と言うのかな、
「佇まい」がいいんですね。
他の人の歌を聴いている時の表情とか、
リズムに合わせて軽く身体を動かす感じとか、
物凄く純度の高い宝石を見ているような感じ、
巫女のようでもあって、
彼女がいるだけ舞台が浄化されるような気がします。

ラス前に松尾さん作の長台詞を言うのですが、
これがまたいいんですよね。
説得力があって感情が豊かで、
それでいて実体が定かでないような、
何か人間離れした透明感があるんですね。
こういう舞台女優はざらにはいませんね。

途中で披露された「タイムマシンにお願い」も素晴らしくて、
グイと胸を掴まれました。

能年さんは個人的には映像より舞台が良いと思います。
松岡茉優さんは映画は抜群ですが舞台は保守的な演技で今一つ。
逆に能年さんは映画は松岡さんと比べると説得力に弱さがあるのですが、
舞台の存在感は抜群です。

その彼女に「召使を孕ませたおぼっちゃん」を演じさせる、
という捻った趣向がさすが松尾さんという感じで、
非現実的なキャラクターが、
舞台上では見事に具現化されていました。

歌もなかなか良かったですね。
全部上手い訳ではないのですが、
「レ・ミゼラブル」もう1回見てもいいかな、
なんて思ってしまいましたし、
キャロル・キングの「きみの友だち」を聞いたら、
LPで「つづれおり」を聴きたくなりました。
あの辺はもう青春ど真ん中で、
それもいい思い出なんて何もなかったですからね。
思い出すだけで胸が切なくて痛いような気分になります。

ちょっと不満は、
歌舞伎の「勧進帳」のパロディがあるんですね。
妙に長くて、
結構マニアックに原典を使っているのですが、
杉原邦生さんの演出作品でした。
僕は矢張りあの人はどうも合わないな、と感じました。
クドイよね。
基本的に古典芸能のパロディというのは、
原典への理解や愛はないものが殆どで、
なまじ知識があるとこうしたクドイものになるので、
そんなものやらない方がいいのに、
といつも思っています。

そうした不満はありながらも、
トータルには非常に豪華で充実した舞台で、
とても良い気分で劇場を後にすることが出来ました。

出演者の皆さん、松尾スズキさん、
本当にありがとうございました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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小児への短期ステロイド治療の有害事象 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ステロイド治療の小児の副作用.jpg
JAMA Pediatrics誌に、
2021年4月19日ウェブ掲載された、
小児への短期間のステロイド使用と、
その有害事象についての論文です。

糖質コルチコイドは副腎由来のストレスホルモンで、
強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持ち、
特にその抗炎症作用を強化した、
デキサメサゾンやプレドニゾロンなどの合成ステロイドは、
古くから喘息などのアレルギー性疾患、
膠原病や炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患の治療には、
広く使用され、
新薬が多く開発された今日においても、
その有用性は失われていません。

最近では新型コロナウイルス感染症の重症事例においても、
このステロイド治療のみが、
国際的ガイドラインにおいて、
明確な治療効果を有するとして評価されています。

ただ、ステロイド治療には多くの有害事象や副作用もあります。

特に長期の継続的治療においては、
医原性クッシング症候群や消化管出血、
感染症、緑内障、耐糖能異常、心血管疾患、骨粗鬆症など、
非常に多くの有害事象や副作用が起こることが分かっています。

ただ、ステロイドほど安価で有効性のある薬剤が、
他には存在していないこともまた事実で、
多くの病気においてステロイドはまだ使用されていますが、
それはそのリスクとメリットを天秤に掛けて、
慎重な判断の元に行われているのです。

さて、たとえば気管支喘息を例に取ると、
以前はステロイドの飲み薬が、
継続的に使用されていましたが、
現在はそれが全身的影響の少ない吸入ステロイド剤に変更され、
ステロイドの飲み薬や注射薬は、
急性増悪と呼ばれる悪化時のみに、
短期間使用されるのが一般的になっています。

このステロイドの短期使用というのは、
概ね14日以内の使用のことで、
この方法であれば多くのステロイドの有害事象は、
健康上の問題にはならないと想定されています。
ただ、その根拠はそれほど精度の高い臨床データによって、
実証されているという訳ではありません。

今回の研究は台湾において、
18歳未満に使用された14日以内の経口ステロイド剤の使用履歴と、
その後の有害事象の頻度を検証したものです。

解析されたトータル4542623名の小児のうち、
23%に当たる1064587名が、
ステロイド剤の短期使用を受けていました。

その主な使用目的は、
急性呼吸器感染症とアレルギー性疾患でした。

その結果、未使用と比較した、
使用後5から30日以内のステロイド剤治療による有害事象のリスクは、
消化管出血が1.41倍(1.27から1.57)、
敗血症が2.02倍(95%CI:1.55から2.64)、
肺炎が9.35倍(95%CI:9.19から9.51)、
それぞれ有意に増加していました。

使用後31から90日の同様のリスクは、
消化管出血が1.10倍(95%CI:1.02から1.19)、
肺炎が1.09倍(95%CI:1.07から1.11)と、
30日以内よりは低いものの有意に増加が認められ、
敗血症については有意な増加は認められませんでした。

これは絶対値でみると、
処方1000人当たり年間で、
最も多い肺炎でも、
9.35件の増加にとどまっていますから、
それほど頻度の高いものではないのですが、
短期間のステロイド使用でも、
このように明確な有害事象の増加が認められることは重要視するべきで、
短期間のステロイド投与についても、
その必要性とリスクとを天秤に掛けた上で、
慎重に使用することが望ましいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス変異株検査への提言 [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は新型コロナウイルス関連の話題です。

4月21日の朝のニュースを見ていたら、
4月20日の東京の新型コロナウイルス感染症の患者は、
711名報告され、
検査数は6435件、
変異株は初めて100例を越え、
115例が報告された、
という報道がありました。

これね、皆さんはどう理解をされますか?

多分、711例の感染者のうち、
115例が変異株であった、
と理解されるのではないでしょうか?

でもそれは違うんですね。

こちらをご覧ください。
変異ウイルス発生届.jpg
こちらが東京都健康安全研究センターを介した、
4 月20日夜の時点での、
変異株の報告をまとめた資料です。

全体で322件の検査をして、
そのうち115件が変異株であった、
と記載されています。
その内訳は東京都の機関である、
東京都健康安全研究センターで検査された事例が77件で、
そのうちの19件が陽性、
民間の検査機関(含む大学など)で検査された事例が245件で、
そのうちの96件が陽性です。

これは敢くまで4月19日夜の報告以降で、
判明した数を示しているものなのですね。
その全てが陽性者の711名の中に含まれているのかどうかは、
分からない訳です。

東京都健康安全研究センターの検査というのは、
保健所を介して行われた検査の中から、
抽出されたものという説明になっています。
つまり、クラスターなどの事例で、
施設や病院、学校などでの検査が、
その主体ではないかと思われます。
この場合はN501YとE484K両方のスクリーニングをして、
それから遺伝子解析も全例ではないのでしょうが、
自前でやっているようです。
こちらはそのまま東京都に直接報告される分ですね。

それから、残りの245件の検査というのは、
主にクリニックが委託しているような、
検査会社が変異株の検査をしている分です。

これは感染症研究所から、
なるべく変異株の検査をして下さい、
というお願いというか依頼が来ているのですね。
ただ、それは義務ではないし、命令でもないので、
個々の検査会社は「やれる分だけ仕方なくやっている」
というのが実際なのです。
検査会社によって、
真面目なところは全例に近く検査をしているようですし、
不真面目というか儲け主義のところは、
あまり検査はしていないのです。

検査は主にN501Yのみが行われているようで、
遺伝子解析までは勿論やってはいないのです。

こうした検査会社での検査は、
依頼した僕達のような医療機関の指示とは、
全く無関係に行われています。
その結果は依頼した医療機関には直接開示はされず、
時には実施されたかどうかさえ説明はされません。
そして、全て感染症研究所に報告され、
感染症研究所がとりまとめた上で、
保健所に改めて報告されるという段取りです。

711例中322例の検査がされているとすれば、
これは半数は検査をされているということになります。
そうした理解をされている方も多いかと思いますが、
それは違うのですね。
変異株検査にはタイムラグがありますし。
報告も発生数とは異なり、毎日ではないのですね。
ここ数日は毎日に近く報告されていますが、
その前は数日毎か1週間に1回程度でした。
集計がバラバラなので正確な数字は分かりませんが、
現状でも4分の1程度しか変異株の検査はされていないと思います。

しかも、問題なのは誰の検査をするのかは、
検査会社によって恣意的に選択されていて、
依頼した医療機関の意向も反映されていませんし、
逆に無作為に抽出されている、
という訳でもないということです。

要するにこの数字から、
全体としての変異株流行の広がりや頻度を、
科学的に推定することは不可能だということです。

東京の場合2月くらいには殆ど報告事例はないのですが、
これは検査をされた事例自体がとても少ないので、
その頃は本当に変異株が少なかったのか、
それとも同じくらいあったのに検査がされていないためなのか、
それも全く分からないのです。

こんな状態で本当に良いのでしょうか?

良い訳がありません。

そこで僕の現時点での提言ですが、
少なくとも行政検査を受託している検査会社は、
全ての陽性事例でもれなく変異株の検査をするべきだと思います。

これは不可能ではないのです。
検査会社によっては、
もう既に全例検査をしているからです。

それを多くの検査会社が今していないのは、
単純にそうした明確な指示がないからです。

行政検査は自費検査と比べれば遙かに高い価格で受託されています。
値引きはされず全て公費で賄われています。
一方で3000円の自費検査があるにも関わらずです。
勿論3000円できちんとした精度管理がされているとは到底思えませんから、
その価格設定は論外ですが、
今検査がシステム化され大量に行われているのに、
今の価格設定も別の意味で法外だと思います。

何が言いたいかと言えば、
行政検査を受託している検査会社は大きな利潤を出しているのです。
端的に言えば大儲けしているのです。
そうであるなら、
陽性の事例全例で変異株の検査をしても、
これはもう罰は当たらないのではないでしょうか?

いや、公共の福祉の観点から言って、
やるべきではないでしょうか?

PCR検査をもっと増やせと声高に言う人は多くいますが、
何故か変異株の検査を陽性例で全例やれ、
という声はそれほど大きくは聞こえて来ません。

しかし、実際には無症状の人に闇雲に行うRT-PCR検査より、
変異株の検査を陽性事例全例で行う方が、
今の感染状況を正確に判断し、
有効な対策に結びつけるためには、
遙かに有効な方法であると思います。

変異株に感染した患者は、
若年で持病がなくても重症化している、
というような言い方がされていますね。

しかし、そこに科学的根拠がどれだけあるのでしょうか?

メディアに登場する病院の医師は、
自分の病院の入院患者のみの経験から、
割と平気でそうした発言をされていますが、
それは敢くまで少数例の患者を診ての「感想」に過ぎない知見ですよね。

医者も科学者の端くれであるなら、
自分の経験を根拠なく一般化して、
一般の方の不安を煽るような行為は、
慎むべきではないかと個人的には考えます。

それから英国型や南アフリカ型という言い方をしないで、
N501Y変異とか、E484K変異という言い方を多用していますよね。

これも不適切な言葉の使い方のように思います。
N501Yというのは多くの変異株が持っている点変異、
と言っているに過ぎませんよね。

英国型というのは、501Y.V1(B.1.1.7)、
南アフリカ型というのは501Y.V2(B.1.351)という名称があり、
それはN501Y変異を含む複数の変異を持つ変異株のことです。
この2種類の変異株はかなり異なる性質を持っているので、
これを一括りにN501Y変異株として扱うのは、
誤解を招くもので適切なものとは思えません。
まっとうな英文の論文で、
そうした言い回しを僕は目にしたことがありません。

こうした言い方をするのは、
多くの変異株の検査がN501Yのみを検出しているためで、
厚労省の資料などを読めば、
勿論正しいことが書かれているのですが、
一般に報道されている情報などをみると、
「N501Y」という独立の変異株があるように誤解されていて、
この点は解析の方法論にも問題はありそうです。

変異株の知見は、
それほどの裏付けがないまま1人歩きしているという感があり、
これは日本国内に限りませんが、
行政の責任者や政治家は、
感染の急拡大を、
自分の施策の責任ではなく、
「変異株が悪いのだ」という言い方で、
責任転嫁の道具にしているように感じます。

そうした言説を許さないためにも、
もっと正確なデータと知見を元に、
変異株の意味と対策が、
より科学的になされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の再感染率(米国海兵隊員のコホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの再感染リスク.jpg
Lancet Respiratory Medicine誌に、
2021年4月15日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の再感染率を、
アメリカ海兵隊の新兵を対象としたコホート研究で、
検証した論文です。

これは2021年1月に査読前の論文サーバーに公開された知見で、
その時にも一度記事にしています。
今回ほぼ同じ内容で査読を受け一流誌に掲載となりましたので、
再度ご紹介させて頂きます。

自然感染の場合の、新型コロナウイルス感染症の免疫が、
1年は保たないというのはほぼ間違いのない事実ですが、
それでは一度感染してから数ヶ月以内という短期間で、
どのくらいの再感染が起こるのでしょうか?

今回の疫学研究はアメリカ海兵隊の新兵を対象としたもので、
2週間の隔離により、その時点での感染有無を確認し、
その後6週間の経過観察を行って、
その間の再感染率を検証しています。

対象は3076名の新兵で、
年齢は18から20歳、92%は男性です。
そのうちの189名が新型コロナウイルスの抗体が陽性で、
感染の既往ありと判断されました。
勿論観察開始の段階で複数回のRT-PCR検査を行い、
陰性であることは確認されています。
6週の観察期間中に、
10%に当たる19名がRT-PCR検査で陽性と確認、
つまり、10人に1人は再感染した、
ということになります。
一方で登録時に抗体陰性で未感染の2247名中では、
48%に当たる1079名が感染しています。
要するに集団感染が起こってしまったのです。

ここから、
一度感染して抗体が出来ると、
短期的な感染リスクは、
未感染者の18%(95%CI:0.11から0.28)に減少したと推計されます。

つまり、
感染リスクは既感染により5分の1になりますが、
それでも10%の抗体陽性者が、
6週間という短期間で再感染しているのですから、
集団感染が発症したような場合には、
再感染も稀ではない、
という認識を持っていた方が良いようです。

ただ、抗体陽性者の再感染では、
検出されたウイルス量は初感染より明らかに少なく、
一定の防御は働いていると思われます。

前回の既感染者に1回のワクチン接種でブースター効果が確認された、
という知見も併せて考えると、
一度新型コロナウイルス感染症に罹患した人でも、
1回のワクチン接種を行うことは、
有効性の高い予防策であるように考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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