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「キス」(飴屋法水×山川冬樹) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
キス.jpg
2021年の4月17日から20日に、
北千住の元風呂屋というイベントスペース「BUoY」で、
演劇の孤高の天才、飴屋法水さんと、
パフォーマーの山川冬樹さんによるコラボ公演が行われました。

ツィッターで告知を見て、
これは絶対行かないと後悔するやつじゃん、
と思い無理して出掛けました。

北千住は僕の守備範囲からはかなり遠いんですよね。

ここは来るのは3回目で、
一度目はゴキブリコンビナートの本公演で使用され、
二度目は2階の方で庭劇団ペニノのVR公演が行われました。

凄いメンツでしょ。

確かに魅力のある場所なんですね。
地下のイベントスペースは元風呂屋を、
そのまま打ちっ放しの地下空間にしたもので、
中央に太い柱があるので、
普通の劇場的に使用するのは難しいのですが、
昔のジャンジャンや文芸座ルピリエを大きくしたような雰囲気で、
アングラなイベントには絶好のダークな感じです。
また、以前のマンホールがそのまま残っていて、
それをそのまま使用することが出来るんですね。
これは最高です。

飴屋法水さんは小劇場演劇の孤高の天才で、
その雰囲気も含めて、
今ではもう生ける伝説のような人ですよね。

最近は他のアーチストとのコラボ的なイベントが活動の主体で、
通常の演劇公演のようなものは、
殆どされていないのが残念ではあるのですが、
こうしたイベントも充分刺激的で、
唯一無二の体験が待っています。

もう結構お年なのに、
相当乱暴者でもあるんですね。
数年前のおアゴラ劇場の公演では、
フェンシングのマスクを被って登場して、
その中に沢山の爆竹を放り込んで爆発させたんですよね。
電撃ネットワークも顔負けでしょ。
呆然としました。

今回は新型コロナがテーマで、
人工臓器を載せた自走式のロボットが、
舞台を動き回っていて、
飴屋さんの子供のくるみさんが、
沢山のマスクを盥の水に濡らして、
それから斜めに張られたヒモに1つずつ吊して行きます。
壁には1990年代に、
シャーレに皆で咳をして、
飛沫を培養して喜ぶような、
今では背筋が凍り付くようなイベントをしている画像が、
エンドレスで流れています。

これだけでもう本当にワクワクしますよね。

こうした組み合わせのバランスと異様さ、
そして不穏な空気感の醸成の仕方が、
まさしくアングラの血脈なのです。

それからマスクを吊していたロープが落ちると、
くるみさんが新型コロナの昨年からの経緯を、
年代記的に読み上げ、
それに連れてマンホールの闇の底から、
ガスマスクやダイヤモンドプリンセス号の模型など、
色々な物が水を滴らせながら引き上げられ、
山川冬樹さんは逆さ吊りになり、
足を縛ったロープで、
下水の底から引き揚げられます。
これはもう最高ですよね。アングラ万歳の奇観です。
それから飴屋さんは目立たないように、
マンホールの底から這い上がって来ます。

山川さんは音楽を演奏し、叫び、
飴屋さんとチューブで繋がれたガスマスク姿で格闘し、
最後は一緒にマンホールから地の底へと消えて行きます。

最後に少女2人がキスをしている絵の話を飴屋さんがするのですが、
パフォーマンスが終わって外に出ると、
出口のところにちゃんとその絵が飾ってあります。
この辺のセンスも素晴らしいなと感心しました。

内容はね、コロナの話なので、
言わんとすることはいつもより分かるのですね。
飴屋さんと山川さんでディスカッションみたいなこともしますし。

ただ、僕も医療従事者の立場で考えるので、
正直あまり相容れない感じのお話ではありました。

前半でしたか、
山川さんが2020年の緊急事態宣言の時に、
早朝1人で公園に行って運動して、
それが楽しかったとツィートしたらディスられた、
というような話をしていて、
単純に生活の息苦しさを誰かのせいにしているような言説に、
モヤモヤするものを感じてしまいました。

飴屋さんの語りはコロナのことを、
もっと大きな生と死の話、
愛は奪うものでもある、というような話に、
変換してゆくようなレトリックなのですが、
それもちょっとすり替えのようで、
ずるいようにも感じました。

まあこの辺は、立場が違うと感じ方も違うので、
それはもう仕方がないですよね。

パフォーマンスも演劇も大好きなのですが、
そうしたお仕事に関わる方が、
このコロナ禍の時に考えていることには、
正直とても違和感はあるし賛同も出来ないんですね。

困ったなあ、そんな風に考えるなんて。
もう少し他の人の立場にも立って考えればいいのに、
というようには思うのですが、
僕も僕の立場で考えているだけですし、
それはもう所詮人間というのはそうした立場に縛られる生き物なので、
愚痴っても仕方もないことなのかも知れません。

そんな訳でテーマにはモヤモヤしたのですが、
飴屋さんの天才が健在であることを、
再確認させられた素敵なイベントで、
行けて良かったと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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