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オセルタミビル(タミフル)のインフルエンザ入院予防効果(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
タミフルの入院予防効果.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年6月12日ウェブ掲載された、
インフルエンザ治療薬の入院予防効果についての論文です。

インフルエンザには、
現在複数の治療薬が日本では使用可能ですが、
世界的にその有効性が確認されているのは、
オセルタミビル(タミフル)のみです。

現状多くのガイドラインにおいて、
肺炎などで重症化したインフルエンザや、
基礎疾患があって重症化の可能性が高い場合には、
症状出現後48時間以内に、
オセルタミビルの治療を開始することが推奨されています。

しかし、その根拠はそれほど確かなものではありません。

これまでに無作為介入試験のような、
精度の高い臨床試験において、
オセルタミビルの使用が生命予後に与える影響が、
確認されたことはありません。

ただ、集中治療室に運ばれるような重症の患者さんを、
くじ引きで治療と未治療に分けるというような方法は、
実際には倫理的に困難です。

そこで事例を集めて比較するような臨床研究になるのですが、
現状それほど精度の高いデータが多くはなく、
その結果もまちまちであるのが実態です。
また、インフルエンザには複数のタイプがありますが、
多くのこの分野のデータは、
2009年に発生したインフルエンザA/H1N1pdm09を対象としていて、
それ以外のタイプに対する有効性のデータは、
極めて限られています。

今回の研究は、これまでの主だった精度の高い臨床データをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析という手法を用いて、
タミフルの現時点での入院予防効果、
すなわち入院を指標とした重症化予防効果を検証しているものです。

これまでの15の臨床研究に含まれる、
トータル6295名の患者データをまとめて解析したところ、
外来患者に早期にタミフルを使用しても、
その後明確な入院予防効果は確認されませんでした。

つまり、タミフルによるインフルエンザの重症化予防効果は、
実証はされなかったという結果です。

ただ、以前にもご紹介したように、
ウイルス株を限定した重症化予防効果や、
肺炎や集中治療室への入室の有無など、
別個の指標を活用した臨床試験においては、
一定の重症化予防効果や予後改善効果が確認された、
というような報告もあります。

そうした点を検証した上で、
タミフル使用の科学的な適応が、
今後はより明確となることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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