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2型糖尿病予防のための運動の有効性(3軸加速度計を用いた大規模調査) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
運動の量と糖尿病予防効果.jpg
Diabetes Care誌に2023年6月付で掲載された、
2型糖尿病の予防における運動の有効性についての論文です。

習慣的に運動をすることが、
健康に良いということは、
多くの疫学データにより実証されている事実です。

ただ、たとえば2型糖尿病の予防目的、
という観点で考えた時に、
どの程度の運動でどの程度の効果が期待出来るのか、
というような具体的な点についての、
信頼性のあるデータは限られています。

最近毎日の歩数が活動量の目安とされることが多く、
概ね1日5000歩から10000歩の範囲において、
歩数が多いほど心血管疾患などのリスクが低下することは、
国内外のデータにおいてほぼ一致している所見です。

ただ、これも糖尿病予防に限定して考えると、
それほど明確な結論が出ているという訳ではありません。

一番の問題は、
こうしたデータの殆どが、
対象者のアンケートの結果のみを、
その情報源としているということです。

そこで今回の研究では、
遺伝子情報を含む医療情報を収集している、
UKバイオバンクの医療データを活用して、
90096名の一般住民に、
3軸加速度計という、
3方向の加速度を測定する特殊な機器
(腕時計タイプ)を7日間装着して、
日々の運動量(エネルギー消費量)を正確に測定し、
その運動量と糖尿病の発症リスクとの関連を、
比較検証しています。

7年を超える健康観察の結果、
3軸加速度計のデータを元にして算出された、
エネルギー消費量が多いほど、
2型糖尿病の発症リスクは低下していました。
エネルギー消費量が5kj/kg/day高いと、
糖尿病のリスクは、
BMIで補正しない場合は19%、
BMIで補正した場合11%有意に低下していました。
これは早足で20分の歩行をする習慣と同等です。

このように、今回の厳密な運動量の計測から、
少しの運動を付加することにより、
糖尿病の予防に繋がるということと、
勿論無理はしないという条件付きですが、
運動はすればするほど糖尿病の予防に繋がることが示唆されました。

今後こうしたデータが蓄積されることにより、
科学的な糖尿病予防の手法が、
明確に規定されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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