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MMRワクチンの早期接種の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
MMRワクチン早期接種の有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年6月7日ウェブ掲載された、
通常より早い時期に麻疹などのワクチンを接種した場合の、
乳児の感染予防効果を検証した論文です。

麻疹と風疹とおたふくかぜの3種類の予防ワクチンを、
新三種混合ワクチン(MMRワクチン)と呼んでいます。

これは3種類のウイルスの弱毒生ワクチンを混合したもので、
世界中で広く接種が行われています。

ただ、日本ではここからおたふくのみを抜いた、
MRワクチンが接種されています。
これは以前日本で開発されたMMRワクチンが、
おたふくワクチン由来と思われる無菌性髄膜炎の副反応のために、
接種が中止されたことが原因となっています。

このMMRワクチンもしくはMRワクチンは、
生後1歳くらいを目安に初回の接種が施行されることが、
通常となっています。
これは1歳未満ではまだ母親からの抗体の影響があり、
弱毒生ワクチンの効果が、
減弱する可能性があるからです。

ただ、生後6か月くらいのより早い時期に、
麻疹ワクチンを含むワクチンを接種することにより、
麻疹以外の幅広い感染症の重症化を抑制し、
乳児死亡が抑制されたとするデータが、
主に低所得の地域から報告されています。

このことから、
麻疹ウイルスには一種の免疫賦活作用があり、
麻疹以外の感染予防効果もあるのではないか、
という仮説が提唱されています。

今回の研究はデンマークにおいて、
生後5から7か月の乳児6540名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方はMMRワクチンをその時点で接種し、
もう一方は偽ワクチンを接種して、
その後12か月までの経過観察を行っています。

その結果、
MMRワクチンを早期に接種してもしなくても、
生後12か月までの感染症による入院のリスクには、
有意な差は認められませんでした。

つまり、少なくともデンマークのような、
地域的には高所得の地域においては、
MMRワクチンを通常より早期に接種することの、
明確なメリットは確認されなかったという結果です。

勿論周辺で感染が拡大したような際には、
6か月以降の早期におけるワクチン接種も認められていますが、
通常は1歳を基準としてMMRワクチンを接種する方針で、
大きな瑕疵はないと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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