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岩松了「カモメよ、そこから銀座は見えるか?」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
カモメよ、そこから銀座は見えるか?.jpg
岩松了さんの新作が、
今本多劇場で上演されています。
画像は富山公演のものですが、
東京公演に足を運びました。

これはちょっとレトロな雰囲気の、
おそらく昭和の時代の銀座を舞台にして、
井之脇海さん演じる兄と、黒島結菜さん演じる妹、
そして2人の父親の愛人であった、
松雪泰子さん演じる女性との関係を軸に、
汚職事件が絡んだ、
松本清張さんの小説のようなドラマが展開され、
青木柚さん演じる謎の青年の登場から、
最近の岩松さんが良く描いている、
誰が生きていて誰が死んでいるのか定かでない、
内田百閒のような幻想世界に帰着します。

最初に若い2人の「浮浪者」が登場し、
靴を巡る「ゴドーを待ちながら」的な会話を展開。
そこから青木柚さん演じる青年が、
架空の兄と妹の話をするのですが、
相手の青年はその妹が兄に渡す筈の弁当を、
既に持っているのです。
そこに架空の話と紹介された兄妹が実際に登場し、
今度は浮浪者2人の方が、
架空の存在であるかのようにも見えて来ます。

兄妹の父親の愛人であった松雪さんが登場すると、
どうやら松雪さんが産む筈であったが、
実際には生まれなかった兄妹の腹違いの弟が、
その浮浪者であったという開示があります。
しかし、その後も物語は生と死の反転を繰り返し、
浮浪者はある世界では縊死していて、
別の世界では妹と恋人になっている、
という反転したビジョンのままに幕が下ります。

岩松さんらしい幻想怪異譚で、
比較的分かり易い部類とは思いますが、
ハンカチなどの小道具の複雑な移動や、
カモメの出現や銀座が海だったことのリフレインなど、
例によって謎めいたディテールと、
複雑で精緻な仕掛けが絡み合い、
矢張り途中で観客は置いてけぼりにされて、
最後は迷宮の中に彷徨うような気分にさせられます。

岩松作品としてはそれほど突出したもの、
という印象はありませんが
最後の詰め方はなかなか迫力があり、
役者も岩松世界を充分分かった手練れが揃っているので、
まずはその迷宮世界にゆったりと浸ることが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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