SSブログ

早期浸潤乳癌の生命予後(イギリスの経年データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
乳がんの生命予後の変遷.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年6月13日ウェブ掲載された、
限局性の乳癌の予後が、
この20年でどのように変化したかを検証した論文です。

治療の進歩や検診などの普及により、
遠隔転移を伴わないような比較的早期の乳癌の予後は、
改善していると言われています。

ただ、乳癌の死亡率がその間にどの程度低下したのかについての、
精度の高いデータはそれほど存在していません。

今回の研究ではイギリスにおいて、
国の登録システムを活用し、
1993年から2015年の個々の時期における、
早期の浸潤乳癌の死亡率を比較検証しています。
トータルな登録患者数は512447名です。

この場合の早期浸潤乳癌というのは、
癌が乳腺内に留まっているか、
癌が小さく腋下のリンパ節転移までに留まっているもので、
病期のⅠ期とⅡ期に相当しています。

診断された時期を、
1993から99年、2000から04年、2005から09年、2010から15年の、
4期に分けて検証したところ、
診断後5年の死亡率は、
1993から99年の時期では14.4%(95%CI:14.2から14.6)であったのに対して、
時期が進むにつれ徐々に低下し、
2010年から15年には4.9%(95%CI:4.8 から5.0)となっていました。

それを図示したものがこちらになります。
乳がんの死亡率の変遷の図.jpg

このように治療の進歩や早期発見の増加により、
乳癌の生命予後は大幅に改善していますが、
癌の性質や病期によってはまだ死亡率が高いケースもあり、
今後もこうした情報がアップデートされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)