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心臓死ドナーからの心臓移植の脳死ドナーとの比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心臓死ドナーからの心臓移植の比較.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年6月8日付で掲載された、
脳死ではなく心停止後の臓器移植についての論文です。

臓器移植に関わる死後の臓器提供には、
脳死下での臓器提供と、
それ以前の一般的な死である、
心臓死下での臓器提供があります。

脳死の場合には心臓や肺などの臓器が利用可能ですが、
心臓死での臓器提供は、
日本では腎臓、膵臓、眼球に限られています。

これは、心臓などの臓器は心停止で血流が停止すると、
急速にその機能が低下するので、
臓器を摘出して移植を行っても、
成功率が低くなることがその主な理由です。

特に心臓はそれ自体の停止を確認する訳ですから、
その心臓を取り出しても、
移植は困難であるように通常はそう考えます。

しかし、深刻なドナー不足などの理由もあり、
科学技術の進歩もあって、
最近海外では心停止後の心臓移植が試みられ、
一定の成果を挙げています。

実際急性疾患で入院し、
呼吸が停止したために人工呼吸器を装着したものの、
もう回復が見込めないと判断されたような患者さんの場合、
家族の同意のもとに人工呼吸器を外す、
というようなことは医療現場でしばしば行われています。
その場合、呼吸が停止して間もなく、心臓も停止し、
その時点で心臓死と診断されますが、
その瞬間に準備をしておいて心臓を摘出すれば、
その状態は脳死からの摘出と、
実際にはそれほど変わらない、という言い方は可能です。

心臓死ドナーからの心臓移植の場合、
その摘出した心臓を、
体外で再灌流して保存します。
その装置がこちらです。
心臓死ドナーの管理の図.jpg
こうした再灌流装置の進歩により、
その組織の劣化を防ぎつつ、
移植手術に繋げることが可能となったのです。

今回の臨床試験では、
心臓死のドナーからの心臓移植を受けた90名を、
従来の脳死ドナーからの移植を受けた90名と、
その短期予後を比較検証しています。
その結果、移植後半年の生命予後には、
両群で明確な差は認められませんでした。

現状日本ではまだ、
法的にもそうした移植は認められていませんが、
今後は間違いなく検討される流れにはなると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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