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新型コロナ感染後2年の症状経過(スイスの住民データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などに廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナの罹患後2年経過.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年5月31日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の罹患後長期経過についての論文です。

新型コロナ感染症罹患後の、
1か月を超える長期の体調不良(所謂新型コロナ後遺症)は、
罹患後3から6か月の時点で、
ワクチン未接種者の20から30%に生じると報告されています。
感染者の22から75%(報告によりかなりの幅あり)では、
何らかの症状は1年以上継続している、
というような報告もあります。

ただ、こうしたデータは対象者がまちまちで、
あるものは入院患者のみを対象としていますし、
あるものは医療従事者のみのデータであったりと、
その違いが結果に影響を与えている可能性があります。
また、繰り返す感染の影響やワクチン接種などの影響が、
強くなっている時期のデータでは、
そうした影響とデータとの関連にも注意が必要です。

今回のデータはスイスにおいて、
特定地域の全人口を対象としたもので、
2020年9月から2021年1月に掛けて、
ワクチン未接種の住民の感染後の自然経過を観察したものです。

つまり、デルタ株以前の時期において、
比較的純粋に新型コロナ初感染の影響を、
みているデータということになる訳です。

1106名の新型コロナ初感染者の、
罹患後2年までの経過を観察したところ、
そのうちの22.9%は罹患後半年の時点においても、
何らかの体調不良を抱えていました。
その残存する体調不良の頻度は、
罹患後1年では18.5%に、
罹患後2年では17.2%と低下しています。
時間と共に後遺症は改善するものの、
時間が経つにつれその低下は緩やかになっている、
ということが分かります。

これを未感染のコントロール群628名と比較してみると、
罹患後6か月の時点で、
感染による体調不良は、
コントロール群の上乗せとして17.0%と算出され、
コントロールと比較した場合に多かった症状は、
味覚嗅覚障害が9.8%、労作時倦怠感が9.4%、呼吸困難7.8%、
集中力低下が8.3%、記憶障害が5.7%となっていました。
これが実際の後遺症の症状比率を反映していると思われます。

このように、
新型コロナ後遺症は確実にあり、
その頻度は無視出来ないものですが、
これまでのデータはかなりバイアスが掛かっていることも事実で、
今後感染の時期による違いなどを含め、
より詳細な検証が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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