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肺癌と抗菌剤使用との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
肺癌と抗菌剤.jpg
Journal of Infection and Public Health誌に、
2023年掲載された、
抗菌剤の長期使用と肺癌リスクについての論文です。

肺癌は現在においても予後の悪い癌の1つとして知られています。

その原因としては、
喫煙が最も重要であることは間違いがありませんが、
非喫煙者にも肺癌が起こることもまた事実で、
その原因は、
遺伝的素因や大気汚染など検証はされているものの、
不明な点を多く残しています。

最近腸内菌叢と肺癌リスクとの関連を、
指摘するデータがあります。

腸内細菌叢の乱れが、
免疫細胞に影響を与え、
それが肺癌などの癌のリスクに繋がっているのではないか、
という仮説です。

腸内細菌叢を乱す要因として抗菌剤の不適切な長期使用が指摘されています。

仮に腸内細菌叢と肺癌リスクに関連があるとすれば、
抗菌剤の使用と肺癌リスクとの間にも、
何らかの関連があるのではないでしょうか?

今回の研究は韓国において、
医療保険のデータを活用することにより、
この問題の検証を行っています。

40歳以上で健康診断を施行した、
トータル6214926名の一般住民を対象として、
抗菌剤の処方データと肺癌の診断との関連を調べました。

その結果、
中央値で13年の経過観察期間中に、
合算で365日以上抗菌剤の処方がされている人は、
全く使用していない人と比較して、
肺癌と診断されるリスクが、
21%(95%CI:1.16から1.26)有意に増加していました。
また1から14日抗菌剤処方群と比較しても、
21%(95%CI:1.17から1.24)有意に増加していました。

つまり、抗菌剤の長期使用が、
肺癌リスクの増加に繋がっていることを、
示唆するような結果です。

ただ、抗菌剤の使用歴が多い人は、
それだけ呼吸器系を含む感染症に罹患していたという可能性はあり、
その感染自体が肺癌のリスクになった、
という可能性も当然考えられます。

従って、
肺癌を含む癌と抗菌剤の使用との関連は、
まだ今後の検証を待つ必要がありますが、
耐性菌などの問題もあるので、
抗菌剤の使用は必要最小限とすることが、
健康リスクを高めないためには望ましい、
ということ自体は、
心がけておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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