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コーヒーの大腸癌予防効果(2023年アンブレラレビュー) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーの大腸癌予防リスク.jpg
Techniques in Coloproctology誌に、
2023年5月2日ウェブ掲載された、
コーヒーと大腸癌リスクとの関連についての論文です。

コーヒーを1日3から4杯くらい飲むことが、
心血管疾患や糖尿病、脂質異常症などのリスクを下げ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データにより、
ほぼ確立された事実です。

ただ、それではどんな病気にも、
コーヒーは予防的に働くのかと言うと、
勿論そうしたことが証明されているという訳ではありません。

癌の発症リスクについては、
まだコーヒーの健康効果が認められる前に、
コーヒーを多く飲む人では膀胱癌が多い、
という複数のデータが報告されています。
その一方でトータルな癌のリスクはコーヒーを飲む人の方が低い、
という報告も複数あり、
また肝臓癌については、
コーヒーの予防効果を期待させるような結果が、
これも複数報告されています。

コーヒーと癌リスクについての関連は、
まだクリアになっているとは言えないのです。

2020年のBMC Cancer誌に掲載されたアンブレラレビューの論文では、
肝臓癌と子宮体癌では発症リスクの低下が認められた一方、
膀胱癌と小児の急性リンパ性白血病では、
若干のリスク増加が指摘されています。

大腸癌とコーヒーとの関連についても、
複数の報告があり、
概ねコーヒーの予防効果が報告されています。
ただ、その低下効果は様々で、
一定の結論が得られていません。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床データや疫学データを、
まとめて解析したメタ解析の複数の論文を、
更にまとめて解析する、
アンブレラレビューと呼ばれる手法により、
これまでの「集合知」として、
コーヒーと大腸癌との関連を検証しています。

これまでの14のシステマティックレビューを、
まとめて解析した結果として、
そのうちの5件のレビューで、
コーヒー摂取により大腸癌のリスクは11から24%低下し、
2件のレビューで結腸癌リスクが9から21%、
1件のレビューで直腸癌リスクが25%低下していました。

あるレビューでは、
1日6杯以上のコーヒーで大腸癌のリスクは7%、
別のレビューでは、
1日5杯で8%、6杯で12%の低下が認められていました。

デカフェのコーヒーについては、
3件のレビューにおいてコーヒーを飲む習慣による、
大腸癌リスクの低下が認められました。

このように、
主にカフェインを含むコーヒーを飲む習慣と、
大腸癌リスクの低下との間には一定の関連が認めれました。
そのリスク低下は、
たとえば心血管疾患などの予防効果と比較すると、
より多い1日5杯以上で認められていて、
デカフェのコーヒーでも有効な可能性はあるものの、
カフェイン入りのコーヒーほど明確とは言えませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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