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スタチンの使用法と心血管疾患二次予防効果との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの使用法比較二次予防.jpg
JAMA誌に2023年3月6日ウェブ掲載された、
コレステロール降下療法の手法による有効性の違いを検証した論文です。

急性心筋梗塞などの、
虚血性心疾患の患者さんでは、
心臓病の再発のみならず、
脳卒中や心不全などの心血管疾患のリスクが、
非常に高い状態となることが知られています。

そのため一度でもこうした病気を発症した患者さんは、
その再発予防の治療を継続する必要があります。

こうした病気の再発のリスクとして、
血液のLDLコレステロールが高いことが重要で、
そのため主にスタチンというコレステロール降下剤を用いて、
コレステロールを持続的に低く保つことが、
有効な治療として行われています。

アトルバスタチンやロスバスタチンなどが、
こうしたスタチン製剤の代表で、
コレステロールの合成酵素を阻害することにより、
強力にコレステロールを低下させる作用があります。

ただ、こうしたスタチン治療の方法には、
幾つかの考え方があります。

その1つの方法は、
血液中のLDLコレステロールを半分以上強力に低下させる作用のある、
高力価のスタチンを使用して、
最初からそれを継続するという方法です。
この方法では、特にコレステロール値を検査して、
薬の量を調節することは求められていません。

もう1つの方法は、
やや少なめの量のスタチンから治療を開始して、
血液中のLDLコレステロールの値を定期的に検査し、
目標値(再発予防では通常50から70mg/dL)に達するように、
量の調整を行うという方法です。

最初の方法は投薬の調整が必要ないので、
治療の継続がしやすいという利点があります。
一方で同じ量のスタチンを使用していても、
その効果にはある程度の個人差があるので、
ある人には効いていても、
他の人には充分な効果が実際には得られていない、
という可能性もあります。
2番目の方法は目標値を決めて治療するので、
患者さんの意欲にも繋がるという側面があり、
また実際の効果を確認出来るという利点があります。
その一方で採血の検査で量の調整をするという煩雑さがあり、
医療費などの患者さんの負担も多くなる、
という欠点があります。

それでは、
実際にこの2つの方法を比較した時、
その目的である心血管疾患の予防効果に、
何か違いがあるのでしょうか?

今回の研究は韓国の複数の専門施設において、
虚血性心疾患と診断を受けたトータル4400名の患者さんを、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は高力価のスタチンとして、
アトルバスタチンを1日40㎎、
もしくはロスバスタチンを1日20㎎、
継続的に使用、
もう一方は血液検査を定期的に施行して、
血液のLDLコレステロールが50から70mg/dLに維持されるように、
スタチンの量を調節して、
3年の経過観察を行っています。

その結果、
総死亡と心筋梗塞、脳卒中、心臓カテーテル治療を併せたリスクには、
両群で明確な差は認められませんでした。

このように、
高力価のスタチンを継続使用する方法でも、
血液中のLDLコレステロールを低く維持する方法でも、
その目的である心血管疾患の予後改善には、
大きな差はないことが確認されました。

今後はこうしたデータを元にして、
個々の患者さんの状況に合わせた、
治療戦略が示されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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