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アルコールの摂取量と生命予後(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコールと死亡リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年3月31日ウェブ掲載された、
アルコールの摂取量と生命予後との関連についての論文です。

健康のために適切な飲酒量はどのくらいか、
というのは未だ解決はされていない問題です。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果を紹介しています。

その一方で、
2016年のメタ解析の論文によると、
確かに飲酒量が1日アルコール23グラム未満であれば、
機会飲酒の人とその死亡リスクには左程の差はないのですが、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
矢張り死亡リスクは増加する傾向を示していた、
というようなデータが紹介されています。

2017年に発表されたイギリスの大規模疫学データでは、
概ね多くの病気において、
全くお酒を飲まない人より、
1日20グラム程度のアルコールを摂取している人の方が、
その発症リスクは低く、
それが適正量を超えるとリスクの増加に繋がる、
というものになっていました。

ただ、喉頭癌、食道癌、乳癌など、
一部の癌はより少ないアルコール量でも、
そのリスクが増加した、
というデータもあります。

このように、
1日23グラム未満のアルコール量の健康影響は、
データによっても異なる部分があり、
まだ結論が出ていません。

今回の研究はこれまでの臨床データを、
少量の飲酒と総死亡リスクとの関連に絞って解析した、
システマティックレビューとメタ解析の論文です。

これまでの107の疫学研究に含まれる、
4838825名の臨床データをまとめて解析したところ、
アルコールを全く飲まない人と比較して、
1日0から1.3グラム未満とたまにしか飲酒をしない人と、
1日1.3から24グラム未満と少量飲酒のみの人は、
総死亡のリスクに有意な違いは見られませんでした。
そして1日25から44グラムと中等量の飲酒では、
有意ではないものの総死亡のリスクは5%高い傾向が見られ、
1日45グラムから64グラムでは19%、
65グラム以上では35%、
総死亡のリスクは有意に増加していました。

このように今回のメタ解析においては、
少量の飲酒では生命予後には明確な悪影響はなく、
1日23から24グラムを超えるような飲酒量において、
初めて総死亡の増加傾向は見られていました。

少量の飲酒にリスクがないとは言えませんが、
現状のデータの範囲においては、
生命予後への悪影響は概ね1日1合を超える飲酒により生じると、
そう考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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