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分娩時の抗菌剤使用の敗血症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アジスロマイシンの出産前の使用効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年3月30日付で掲載された、
分娩時に抗菌剤を1回のみ使用することの、
母体と胎児の感染予防効果についての論文です。

出産には多くのリスクがあり、
そのうちの1つが敗血症などの重症感染症です。
特に衛生環境に問題が多い発展途上国においては、
母子の出産時の敗血症による死亡が、
大きな社会問題となっています。

その簡便な予防法として、
抗菌剤を出産前に予防的に使用する、
という方法が試みられ、
帝王切開による分娩においては、
母子の感染予防に一定の有効性が確認されています。

しかし、通常の経腟分娩においても、
同様の予防効果があるかどうかについては、
これまであまり明確なことが分かっていませんでした。

今回の研究は複数の発展途上国において、
妊娠28週かそれを超えていて、
経腟分娩を予定している29278名の妊娠女性を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は抗菌剤のアジスロマイシンを2グラムで単回経口投与し、
もう一方は偽薬を使用して、
その後の敗血症や死亡のリスクを比較しています。

その結果、母体死亡と母体の敗血症を併せたリスクは、
偽薬と比較して抗菌剤使用群の方が、
33%(95%CI:0.56から0.79)有意に低下していました。
その一方で新生児の敗血症や死亡のリスクについては、
両群で有意な差は認められませんでした。

今回の研究においては、
通常の分娩においても、
敗血症などの感染症のリスクが高いと想定される環境では、
抗菌剤を単回使用することにより、
母体の感染と死亡とが一定レベル予防されることが確認されました。
その一方で帝王切開時のデータとは異なり、
新生児の予後には明確な差がなく、
今後のその原因を含めて、
検証が必要であるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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