高齢者の体重変動と生命予後 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2023年4月10日ウェブ掲載された、
高齢者の体重の変動と生命予後との関連を検証した論文です。
体重は健康の大きなバロメーターの1つです。
中年くらいまでの年齢では、
体重増加が病気のリスク増加のバロメーターとなり、
糖尿病や内臓肥満が主な病気として問題となります。
それがある程度高齢になってくると、
むしろ体重は徐々に減少することが、
自然に見られるようになってきます。
これは筋肉や脂肪などの減少による生理的現象ですが、
その程度が生命予後にどのような影響を与えているのか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていません。
また、内臓脂肪の指標としては、
体重よりお腹周りの腹囲の方が、
よりその程度を的確に反映している、
という指摘もあり、
それが健康な高齢者に対しても成り立つのか、
というような点も不明です。
今回の研究はアメリカとオーストラリアで施行された、
アスピリンの予防効果を検証した、
疫学研究のデータを二次利用する方法で、
特に病気のない65歳以上の健常な高齢者の、
体重と腹囲の2年間での変化と、
生命予後との関連を比較検証しているものです。
対象は平均年齢75歳の16523名で、
体重の2年間の変動が5%以下と比較して、
男性の場合5から10%の体重減少があると、
総死亡のリスクは1.33倍(95%CI:1.07から1.66)、
体重が10%を超えて減少すると、
総死亡のリスクは3.89倍(95%CI:2.93から5.18)、
それぞれ有意に増加していました。
これが女性の場合、
同じく体重変動が5%以下と比較して、
5から10%の体重減少があると、
総死亡のリスクは1.26倍(95%CI:1.00から1.60)、
体重が10%を超えて減少すると、
総死亡のリスクは2.14倍(95%CI:1.58から2.91)と、
男性と比べると影響は小さいのですが、
矢張り体重減少と総死亡リスクは関連していました。
この体重減少に伴う死亡リスクの増加は、
癌による死亡のみで見ても、
心血管疾患による死亡のみで見ても、
それ以外の原因による死亡のみで見ても、
同じように認められています。
一方で腹囲の減少も同様に、
死亡リスクの増加に繋がっていましたが、
概ね体重減少よりも小さな影響に留まっていました。
このように、
特に2年以内に10%を超えるような体重減少は、
生命予後の悪化に結び付くような病気に関連している可能性が高く、
特に男性においてはその傾向が顕著であるので、
今後原因のはっきりしない高齢者の体重減少についての、
適切な観察や検査のガイドラインが、
作られることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2023年4月10日ウェブ掲載された、
高齢者の体重の変動と生命予後との関連を検証した論文です。
体重は健康の大きなバロメーターの1つです。
中年くらいまでの年齢では、
体重増加が病気のリスク増加のバロメーターとなり、
糖尿病や内臓肥満が主な病気として問題となります。
それがある程度高齢になってくると、
むしろ体重は徐々に減少することが、
自然に見られるようになってきます。
これは筋肉や脂肪などの減少による生理的現象ですが、
その程度が生命予後にどのような影響を与えているのか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていません。
また、内臓脂肪の指標としては、
体重よりお腹周りの腹囲の方が、
よりその程度を的確に反映している、
という指摘もあり、
それが健康な高齢者に対しても成り立つのか、
というような点も不明です。
今回の研究はアメリカとオーストラリアで施行された、
アスピリンの予防効果を検証した、
疫学研究のデータを二次利用する方法で、
特に病気のない65歳以上の健常な高齢者の、
体重と腹囲の2年間での変化と、
生命予後との関連を比較検証しているものです。
対象は平均年齢75歳の16523名で、
体重の2年間の変動が5%以下と比較して、
男性の場合5から10%の体重減少があると、
総死亡のリスクは1.33倍(95%CI:1.07から1.66)、
体重が10%を超えて減少すると、
総死亡のリスクは3.89倍(95%CI:2.93から5.18)、
それぞれ有意に増加していました。
これが女性の場合、
同じく体重変動が5%以下と比較して、
5から10%の体重減少があると、
総死亡のリスクは1.26倍(95%CI:1.00から1.60)、
体重が10%を超えて減少すると、
総死亡のリスクは2.14倍(95%CI:1.58から2.91)と、
男性と比べると影響は小さいのですが、
矢張り体重減少と総死亡リスクは関連していました。
この体重減少に伴う死亡リスクの増加は、
癌による死亡のみで見ても、
心血管疾患による死亡のみで見ても、
それ以外の原因による死亡のみで見ても、
同じように認められています。
一方で腹囲の減少も同様に、
死亡リスクの増加に繋がっていましたが、
概ね体重減少よりも小さな影響に留まっていました。
このように、
特に2年以内に10%を超えるような体重減少は、
生命予後の悪化に結び付くような病気に関連している可能性が高く、
特に男性においてはその傾向が顕著であるので、
今後原因のはっきりしない高齢者の体重減少についての、
適切な観察や検査のガイドラインが、
作られることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。