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若年性脳卒中後の癌リスク増加について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談や保育園の健診で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中と癌リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年3月28日ウェブ掲載された、
若年性脳卒中後の新規癌リスクについての論文です。

脳卒中と癌は勿論全く別の病気ですが、
両者に一定の関連があるというデータは、
以前より存在しています。

癌の中には、
その初期症状が脳卒中、
というケースがあります。

また、癌の患者さんはその経過の中で、
脳卒中を起こしやすいというデータもあります。
これはその癌そのものの性質による場合もありますし、
癌による身体の変化が、
血液に血栓を生じやすくしたり、
出血を起こしやすくしたという可能性、
また抗癌剤などで治療をされている癌患者であれば、
その副作用として起こるというケースも想定されます。

脳卒中というのは、
脳梗塞と脳出血とを併せた用語です。
脳内出血は高血圧によって起こることが多く、
脳梗塞は身体に血栓という血の塊が出来易い体質や、
心臓の病気、
動脈硬化の進行などによって起こります。

このため、
脳卒中の多くは50歳以上で発症しますが、
中にはより若年での発症があり、
概ね49歳までに起こる脳卒中を、
若年性脳卒中と呼んでいます。
ただ、これは必ずしも国際的な定義のようなものではなく、
文献によっては45歳までになっていたり、
40歳までになっていることもあります。

若年性の脳卒中では、
動脈硬化の進行による原因は、
当然少ないので、
高齢者の脳卒中とは別個に考える必要があります。

それでは脳卒中と癌との関連について、
若年性脳卒中とそうでない場合とで、
何か差はあるのでしょうか?

今回の疫学研究はオランダにおいて、
15歳以上で癌の既往はなく、
初めて虚血性梗塞もしくは脳内出血に罹患した、
15から49歳の27616名と、
50歳以上の362782名の、
脳卒中後の癌リスクを比較検証しています。

その結果、
15から49歳までに若年性脳卒中を発症後1年以内に、
癌が診断されるリスクは、
虚血性梗塞の場合標準的な罹患率の2.6倍(95%CI:2.2から3.1)、
脳内出血の場合標準的な罹患率の5.4倍(95%CI:3.8から7.3)、
有意に増加していました。
この癌リスクの増加は、
主に肺癌と血液系の癌の増加によるものでした。

一方で50歳以上発症の脳梗塞で同様の検証を行うと、
虚血性梗塞の場合標準的な罹患率の1.2倍(95%CI:1.2から1.2)、
脳内出血の場合標準的な罹患率の1.2倍(95%CI:1.1から1.2)と、
こちらも有意に増加はしていましたが、
若年性脳卒中の場合と比較すると、
そのリスクの増加はより小さいものになっていました。

このように、
特に若年性脳卒中においては、
その後1年以内に癌と診断されるリスクが、
通常の数倍以上に増加していて、
その正確な原因はまだ不明ですが、
若年性脳卒中の罹患後には、
必要に応じて癌のスクリーニングを行うなど、
慎重な全身状態のフォローが必要であると思われました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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