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新型コロナ後遺症のリスクについてのメタ解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や小学校の健診で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ後遺症のメタ解析.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年3月23日ウェブ掲載された、
新型コロナ後遺症のリスク因子についてのメタ解析の論文です。

新型コロナウイルス感染症の罹患時には、
その急性症状が回復した後に、
数か月から経過によっては数年に渡り持続する、
倦怠感や息苦しさ、眩暈や精神症状など、
幅広い症状が見られることが知られています。

この現象には多くの呼び方がありますが、
厚労省は「新型コロナウイルス感染症罹患後症状(いわゆる後遺症)」
という言い方を採用しています。

これはWHOが提唱している、
Post-COVID-19 Conditionを翻訳したものと思います。

そのメカニズムにはまだ不明な点が多く、
現時点で有効な予防法や治療法は確立していません。

今回の研究は、これまでの主だった臨床データをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析ですが、
主に新型コロナ後遺症に関わるリスク因子を検証したものです。

これまでの41の臨床研究に含まれる、
トータル860783名の患者データをまとめて解析したところ、
新型コロナ後遺症のリスク因子としては、
女性であることが1.56倍(95%CI:1.41から1.73)、
40歳未満と比較して高齢であると1.21倍(95%CI:1.11から1.33)、
BMI30 以上の肥満が1.15倍(95%CI:1.08から1.23)、
喫煙者が1.10倍(95%CI:1.07から1.13)、
それぞれ有意なリスク増加を示していました。
要するに女性であること、高齢であること、肥満のあること、タバコを吸うこと、が、
新型コロナ後遺症のリスクになるということです。

新型コロナの急性の感染時に、
入院した事例はそうでない事例と比較して、
後遺症のリスクが2.48倍(95%CI:1.97から3.13)、
集中治療室に入室した事例はそうでない事例と比較して、
後遺症のリスクが2.37倍(95%CI:2.18から2.56)、
有意に増加していました。
糖尿病や腎臓病、呼吸器疾患や心血管疾患の存在も、
後遺症のリスクを増加させていました。

また、ワクチンを2回接種していると、未接種と比較して、
後遺症のリスクは43%(95%CI:0.43から0.76)有意に低下していました。

このように、持病がある場合や新型コロナの感染自体が重症であった場合には、
後遺症のリスクもより高くなっていて、
現時点でデータが検証可能な範囲において、
そのリスクを抑制する可能性があるのは、
今回のメタ解析ではワクチン接種のみでした。

今後こうしたデータを基礎として、
本当の意味で有効な後遺症の予防法と治療法とが、
確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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