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ビタミンD間欠大量投与の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDの間欠投与の有効性.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2023年3月31日ウェブ掲載された、
ビタミンDの間欠大量投与の有効性とリスクについての論文です。

ビタミンDはビタミンという名前は付いていますが、
体内でも合成されるステロイドホルモンの一種で、
骨の健康な成長と維持に必須であると共に、
細胞の成長や分化を調節して、
細胞の健康についても必要な成分であると考えられています。

実際にビタミンD濃度が低値であると、
骨粗鬆症や骨折のリスクが高まると共に、
心血管疾患のリスクや癌のリスク、
総死亡のリスクが増加するとする報告があります。

その一方でビタミンDをサプリメントとして使用したような、
介入試験と呼ばれる臨床試験の多くでは、
ビタミンDによる病気のリスク低下や、
生命予後の改善効果は確認されていません。

ビタミンDの高度の欠乏が、
骨粗鬆症や骨軟化症の原因となることは間違いがないのですから、
その補充にビタミンDを使用すれば、
骨量は増加して骨折リスクが低下しても、
おかしくはないように思われます。

しかし、実際にそうした効果のあるのは、
一部のビタミンDの高度の欠乏や、
骨軟化症など特殊な病気を持つ人に限られていて、
血液のビタミンD濃度が低下している一般の人に、
ビタミンDの補充を行っても、
そうした有効性は確認されないのです。

ビタミンDの補充としては、
毎日定期的に使用するという方法と、
たとえば、1か月に1回というように、
間欠的に投与を行うという方法があります。

現状特に混乱があるのが、
この間欠的使用法で、
ある介入試験のデータでは骨折リスクの低下が示唆されている一方、
複数の臨床試験において、
むしろ間欠的なビタミンD大量使用により、
骨折リスクが増加したという結果が報告されています。

ビタミンDの間欠大量投与には本当に危険があるのでしょうか?

今回の研究はその疑問を検証する目的で、
オーストラリアで施行されたもので、
60から84歳の一般住民トータル21315名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は1か月に一度6万単位のビタミンDを補充し、
もう一方は偽のカプセルを使用して、
その後の骨折リスクについて、
中央値で5.1年の経過観察を施行しています。

その結果、
トータルな骨折リスクについて、
ビタミンD使用群と偽薬群との間で、
有意な差は認められず、
時間が経過するにつれ、
有意ではないものの、
骨折リスクは減少する傾向を示しました。

今回の大規模で厳密な臨床試験においても、
ビタミンDの補充を健康な高齢者に施行した場合の、
骨折予防効果は確認されませんでした。

しかし、その一方で一部で指摘されていた、
間欠大量投与による骨折リスクの増加も、
確認はされず、
長期的にはむしろ骨折リスクは低下する傾向を示していました。

この問題は今後も検証が必要ですが、
現状骨折リスクを抑制する目的で、
一般の高齢者にビタミンDを補充することの意義は、
科学的にはあまり実証はされていないと、
そう考えて大きな誤りはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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