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4種類の降圧剤の有効性の個人差について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤の種類と有効性比較.jpg
JAMA誌に22023年4月11日付で掲載された、
複数の降圧剤の有効性の個人差を検証した論文です。

本態性高血圧症の薬物治療は、
通常第一選択薬として、
サイアザイド系利尿薬、カルシウム拮抗薬、
ACE阻害剤、ARB(アンジオテンシン2受容体拮抗薬)、
のいずれかが使用されます。

この4種類の薬は、
ガイドライン上ではほぼ同一に扱って問題ないことになっていますが、
そのメカニズムには違いがあるため、
その有効性には個人差があることが想定されます。

たとえば利尿薬は尿にナトリウムを排泄することが主な作用で、
減塩をすることに近い効果が想定されますが、
減塩の血圧に与える効果自体は、
かなり体質的な差が大きいことが知られています。

そうなると、
減塩に強く反応するような人では、
利尿薬の降圧効果は高い一方で、
塩分の貯留が高血圧の原因ではないような人では、
有効性が低いということが考えられます。

それでは、実際に同じ降圧剤を使用した時に、
その降圧作用は体質によって、
どの程度の違いがあるのでしょうか?

今回の臨床研究はスウェーデンにおいて、
年齢が40から75歳で軽度の高血圧を持ち、
心血管疾患のリスクは低い280名の患者に、
くじ引きで選択された2種類の降圧剤による治療を、
7から9週間ずつ継続し、
その有効性を比較検証しているものです。

使用された降圧剤は、
ACE阻害剤のリシノプリル1日20㎎、
ARBのカンデサルタン1日16㎎、
カルシウム拮抗薬のアムロジピン1日10㎎、
利尿剤のヒドロクロロチアジド1日25㎎のいずれかで、
それぞれ2分の1量への減量も可となっています。

その結果、
治療期間終了時の収縮期血圧は、
リシノプリルが最も低く、
アムロジピンとカンデサルタンはほぼ同等で、
ヒドロクロロチアジドは最も高くなっていました。

個々の治療による血圧低下作用には差があり
リシノプリルとカンデサルタン、
ヒドロクロロチアジドとアムロジピンの間には、
有意な差はなかった一方で、
他に薬の組み合わせでは、
個人による反応の違いが有意に認められました。

ここから、
個人差を考えずに降圧剤を選択した場合と比較して、
個々の反応性によって最適な降圧剤を選択すると、
収縮期血圧を平均で4.4mmHg低下させる効果が、
期待されると推計されました。

この差を大きいと考えるかは微妙なところですが、
平均的には同等の効果の薬であっても、
メカニズムが異なる場合には、
その個人によって効果がかなり異なる、
という知見は医療全般に成立つ重要なもので、
今後そうしたデータを元にして、
真の意味でもオーダーメイドな治療が、
実現することを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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