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新型コロナウイルス感染症のウイルス拡散期間(メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19ウイルス拡散期間.jpg
Lancet誌に2020年11月19日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
ウイルス増殖期間と感染可能性とを検証した、
システマティックレビューとメタ解析の論文です。

第3波と呼ばれるような感染拡大が国内に広がり、
「個々の自覚と感染対策をより厳格に」とは言うものの、
常日頃から気をつけている人は、
「言われるようなことは全てしているし、
これ以上何をどうすればいいの?」
というような気分であると思いますし、
一方で「俺は俺の好きなように生活するんだ!」という人は、
何を言われても言うことは聞かないし、
気をつけることもないのですから、
これはもうどうしようもありません。

そこで矢張り医療従事者の立場としては、
どのような条件で感染が拡大するのか、
どのような状況では感染は広がらないのか、
そうした点についての科学的により正確な知見を、
見つけてゆくしかない、という気がします。

今回の研究では、
これまでの実際の患者データをまとめて解析する手法で、
新型コロナウイルスが感染者の身体でどのくらいの期間検出され、
どのくらいの期間周囲への感染が成立してしまうのかを、
他のコロナウイルスとも比較して検証しています。

新型コロナウイルスについての79の研究の、
トータル5340名のデータを解析した結果として、
上気道における平均のウイルス遺伝子検出期間は、
17.0日(95%CI:15.5から18.6)で、
下気道では14.6日(95%CI:9.3から20.0)、
便中では17.2日(95%CI: 14.4 から20.1)、
血液中では16.6日(95%CI:3.6から29.7)、
となっています。
報告された最も長い遺伝子検出期間は、
上気道では83日、下気道で59日、便中では126日、
血液中で60日となっていました。

この遺伝子検出期間は、
年齢が高くなるほど長くなっていました。

これだけ長期間身体の各所からはウイルス遺伝子が検出される一方で、
発熱などの症状が出現後9日目を超えて、
生きて増殖可能なウイルスが検出された事例はありませんでした。

つまり、ウイルスの遺伝子自体は、
感染後非常に長期間検出されるのですが、
ウイルスの増殖は症状出現後9日以降は検出されず、
そのため感染者からの二次感染の可能性は、
それ以降は成立しないと考えて、
大きな問題はないのです。

新型コロナウイルスのウイルス量は、
症状出現後1週間が最も多く、
SARSウイルスの10から14日、
MERSウイルスの7から10日とは対照的となっていました。

新型コロナウイルのRT-PCR検査の陽性は、
症状のある時点での病気の診断のためには有用ですが、
周囲への感染可能性の指標には全くならず、
陰性になるまで隔離を強要したり、
検査を繰り返すことには科学的意味がないばかりか、
感染者の不安を煽り、周囲の差別感情を惹起する、
という点でむしろ有害です。

現状有症状の場合には、
症状出現後10日以降で無症状であれば、
基本的に周囲への感染リスクはないと、
そう考えて大きな問題はなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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