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東野圭吾「危険なビーナス」 [ミステリー]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
危険なビーナス.jpg
東野圭吾さんの比較的最近刊行されたミステリーで、
今テレビドラマ化されているものの原作です。

東野圭吾さんの作品は、
「鳥人計画」や「魔球」の頃から、
比較的多く読んでいる方ですが、
最近は意識的に軽いタッチのライトノベル的なものと、
本格的な小説とに、
分けて執筆をされているように思います。

「秘密」や「手紙」、「白夜行」などは、
文学作品としても優れたものだと思いますが、
本格ミステリーについても、
軽いタッチのものから、
重厚なもの、
ミステリーの限界に挑戦したようなマニアックなものなど、
多くの振り幅があります。

湯川博士のシリーズなどは、
開始当初は他の作者の有名シリーズの、
明らかな二番煎じという感じで、
あまり高いレベルを目指したものではなかったように感じましたが、
「容疑者Xの献身」の辺りから作者の本気が見え始め、
今では代表作の1つと言って良い、
本格的な小説の柱の1つに成長しています。

ただ、この「危険なビーナス」については、
「マスカレードホテル」のシリーズと同じように、
肩の凝らない、ミステリー初心者向けの、
ライトノベル的な作風となっています。

トーマの有名な「罠」が、
ベースになっているように感じましたが、
それほど深みのある内容ではなく、
犯人の屈折した造形などは、
さすが東野圭吾という感じも仄見えるのですが、
意図的に古いタイプのミステリーに着地しています。

私見では東野さんはかなり意地悪で、
人間観察には独特の冷たさのようなものがあり、
医療や医者は基本的に嫌っているようです。
この作品もそうした点は現れていて、
医療者としては読んでいてつらい感じもあります。
全体的にはほのぼのした軽いタッチですが、
ラストでは主人公の運命を、
ちょっと突き放したように見ている感じがするのは、
東野さんのダークサイドがのぞいている、
という気がします。

これを読むと、
かなりスカスカの内容に、
とても連続ドラマにはならないように感じますが、
ドラマを見てみると、
それがどうして、
ちょっとした人間の駆け引きを引き延ばして、
結構ドラマとしては成立しているのに驚きます。
何もないものを、
何かあるが如くに引き伸ばし続けるのが、
なるほど連続ドラマの極意なのだなあと、
妙に感心しました。

東野さんの作品としては、
それほど気合の入ったものではありません。
コアなファンのみにお勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

追伸;レセプトが終わりません(泣)。
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