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新型コロナウイルス感染におけるニューロピリン-1の役割 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後はインフルエンザワクチン接種と往診で、
都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です
今日はこちら。
ニューロピリンと新型コロナ.jpg
Science誌に2020年10月20日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの新しい感染経路についての論文です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、
人間の身体の細胞にある、
ACE2という受容体に結合することにより感染します。
その後にもう1つのステップがあり、
コロナウイルスに特徴的な表面の突起(スパイク)が、
感染細胞にあるセリンプロテアーゼ(TMPRSS2)という酵素により、
変化(プライミング)を受け、
それにより細胞内に侵入することが出来ると考えられています。

この感染のメカニズムは、
基本的に以前のSARSウイルスと同じです。

その一方でSARSウイルスと、
今回の新型コロナウイルスとの間には、
スパイク部分のアミノ酸配列に一部異なっている部分があります。
この違いにより人間の細胞表面にある、
TMPRSS2とは異なるセリンプロテアーゼの、
furin(フーリン)にも結合して変化し、
今度は細胞表面にあるneuropillin-1(ニューロピリン-1)というタンパク質に、
結合することが可能となります。

それではこのフーリンによるスパイク蛋白の変化と、
それによるニューロピリン-1との結合は、
新型コロナウイルスの細胞への感染に、
どのような影響を与えるのでしょうか?

今回の論文では本物の新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)を、
培養細胞に感染させて、
感染に対するフーリンとニューロピリン-1の関与を検証しています。

その結果、
実験的にフーリンによって変化したスパイクと、
細胞表面にあるニューロピリン-1が結合することが証明され、
この結合を阻害することで、
新型コロナウイルスの細胞への侵入(感染)が、
抑制されることが確認されました。

この現象がSARSと新型コロナウイルスの感染との違いに、
何処まで関連しているのかは現時点では不明ですが、
これまでの想定とはまた異なる、
新型コロナウイルスの感染メカニズムが解明されたことは、
非常に重要な知見であることは間違いなく、
今後この知見が病気の治療や予防に、
結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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