SSブログ

「佐々木、イン、マイマイン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックはいつもは休診ですが、
本日は区民健診の休日当番日なので、
午前中はこれからクリニックに行きます。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
佐々木、イン、マイマイン.jpg
MVなどでも才気を発揮している、
新進気鋭の内山拓也監督の長編第2作で、
作り手の思いが迸るような青春映画です。

藤原季節さん演じる主人公は26歳のフリーターで、
俳優を目指しているものの目標を失い、
もう別れた恋人と微妙な同棲生活を続けています。
そんな主人公が10年前の高校生の頃に、
異形の個性的なキャラを持つ同級生であった、
「佐々木」を思い出し、
その思い出と現実とが交錯するうちに、
「佐々木」のその後も明らかになるという物語です。

時間は現在(おそらく2019年)と、
高校時代の2009年を往還します。

これね、
主人公と佐々木の2人の人生を俯瞰する、
と言う感じの物語なのですが、
主人公が不愛想でキレやすくて、繊細で、
結構「面倒な奴」にも関わらず、
それほど抵抗なく主人公の視点で、
最後まで物語を見続けることが出来るのは、
作り手の役柄への愛情が、
素直に感じられるからだと思います。

オープニングに2つの人生が交錯するのは、
北野武監督の「キッズリターン」を彷彿とさせます。
MV的に一気に加速して、
編集のリズムとスピード感で見せきった感じのあるラストは、
それほど斬新とは思わないのですが、
印象的で心に残ります。
ただ、あのラストを成立させるためには、
もう少し前半からリアルと幻想とが、
入り交じる感じが欲しいですね。

陰影のある画面は美しく、
会話の時などの切り替えしに、
ハッとするような味があります。
ただ、アップの長回しで、
役者さんの涙を待つ、
というような場面が幾つもあって、
これはくどくて頂けないな、
というように感じました。
こういう演出は、
観客としては却って泣けないのではないでしょうか?

主人公と佐々木のキャラには、
多分下敷きとなる実人生があるのですね。
その思い入れは強く感じるのですが、
良いところもある反面、
主人公と恋人との関係などは、
「どうでもいいよ」というようにも感じました。
夢の話をするのも、何か中途半端でしたね。
また、佐々木の死因についても、
かなり唐突ですし、
無理があるように感じました。
カラオケボックスで1人で歌を歌っていた女性をナンパする、
というのは面白いと思いました。
このようにエピソードにかなりムラがあって、
必ずしも1つに収斂しないという感じなので、
もう少しエピソードを整理して、
フィクションとしての練り上げが欲しい、
というようには感じました。

総じて完成度のそれほど高い映画ではなく、
観る人によっては退屈に思えると思いますが、
作り手の熱量は間違いなく高く、
青春映画のお好きな方には、
観て損はない1本ではあると思います。

この作り手達のこれからの映画も楽しみです。
頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)