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新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害の判定法 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの嗅覚障害の判定法.jpg
査読前の論文を公開しているmedRxiv誌に、
2020年7月6日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害の意義を、
その測定法により検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の、
特徴的な症状の1つとして、
嗅覚障害と味覚障害があります。

これは典型的には急に殆どの嗅覚と味覚が、
なくなるというかなり特異なもので、
勿論他の感冒でも鼻閉などに伴って、
同様の症状が起こることがありますが、
それはもっと軽微なもので、
明確に別の所見として区別の出来るものです。

嗅覚障害と味覚障害とが並列に論じられることもありますが、
これまでの知見により、
おそらく嗅覚障害の方が本質的な所見で、
味覚障害は嗅覚障害に伴って起こる、
自覚障害に過ぎないと思われます。

この症状が新型コロナウイルス感染症で生じる頻度は、
報告によりかなりのばらつきがあります。
それも5%から98%という、
とても同じ所見の解析とは思えないばらつきです。
その大きな要因は、
嗅覚障害の診断が、
臭いの試薬などを用いて客観的に行われている場合と、
患者さんの聞き取りにより、
主観的に行われている場合とが、
混在している点にあるように思われます。

今回の研究では、
これまでの34の臨床データをまとめて解析する、
メタ解析の手法で、
新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害の頻度を、
その検出法により比較検証しています。

その結果、
診察により客観的に診断された事例においては、
新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害の頻度は、
77%(95%CI: 61.4から89.2)であったのに対して、
患者の聞き取りによる診断では、
45%(95%CI: 31.1から58.5)と大きな差が認められました。

このように、
実際には従来言われていたより、
新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害の頻度は高く、
かなり特異的な所見として、
その成因を含めて検証する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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