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オメガ3系脂肪酸の心血管疾患予防効果(2020年コーン油との比較) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オメガ3脂肪酸とコーン油の比較.jpg
JAMA誌に2020年11月15日ウェブ掲載された、
オメガ3系脂肪酸と呼ばれる青身魚などの脂の成分の、
薬としての予防効果を検証した論文です。

EPAやDHAという、
オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、
心血管疾患の予防効果のある成分として有名で、
こうした成分を食事で多く摂った方が、
心血管疾患になりにくい、
という点はほぼ間違いのない事実です。

ただ、このEPAやDHAをサプリメントや薬として服用することで、
明確な健康上の効果を示すのか、
という点については、
まだ明確な結論に至っていません。

日本にはエパデール(及びそのジェネリック)というEPA製剤と、
ロトリガというEPAとDHAの合剤があり、
海外の多くの国とは違って、
処方箋薬として流通しているのが大きな特徴です。
国外ではEPAもDHAもほぼ全てサプリメントの扱いだからです。

エパデールについては、
2007年のLancet誌に掲載されたJELISという臨床試験があり、
コレステロール降下剤のスタチンに上乗せでEPAを使用したところ、
心血管疾患のリスクが低下し、
特にサブ解析では脳卒中のリスクが20%低下した、
というものです。

ただ、その後の多くの同様の臨床試験では、
こうしたEPAの効果は確認されませんでした。

しかし、2019年にNew England…誌に掲載された論文では、
心血管疾患のリスクが高くスタチンを使用している患者に対して、
1日4グラムという高用量のEPA製剤を用いて、
心血管疾患による死亡などのリスクが25%、
有意に低下したという結果が報告されました。
偽薬を使用した厳密な方法による臨床試験で、
こうした結果が得られたのはかなり画期的なことでした。

今回の臨床試験もこの2019年論文に似通ったもので、
心血管疾患のリスクが高くスタチンを継続使用している患者、
トータル13078名を、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2つに分けると、
一方はオメガ3系脂肪酸を1日4グラム使用し、
もう一方はコーン油を代用して、
心血管疾患の発症リスクを比較検証しています。
患者は欧米やアジアなど世界22か国で登録されています。

試験は当初の予定より早期に終了しました。
これは中間解析によって、
コーン油よりオメガ3系脂肪酸の方が優れているという結果が、
ほぼ否定されたためです。

つまり、今回の試験ではコーン油と比較して、
オメガ3系脂肪酸がより心血管疾患の予防に有効である、
とは認められなかったのです。

この問題はまだ解決はされていませんが、
スタチンに上乗せした際のオメガ3系脂肪酸の有効性は、
それほど明確なものとは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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