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ダイエットで膵臓の形態異常が改善する [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は月曜日ですが、
クリニックは臨時の休診となります。
ご迷惑をお掛けしますがご了承下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病の治療と膵臓の組織.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2020年10月5日ウェブ掲載された、
体重コントロールによる糖尿病の改善が、
膵臓の形態に与える影響についての論文です。

糖尿病の患者さんにおいては、
MRI検査などで計測される膵臓の重量は減少し、
その辺縁の形状も不整となることが知られています。
膵臓のこうした形態的変化が、
インスリン分泌、特に食後の追加分泌に関連がある、
という知見もありますが、
膵臓の形態のこうした変化が、
糖尿病の原因であるのか、
それとも結果であるのかは、
現時点では明らかではありません。

それでは、血糖値を改善し、
体重を正常化することで、
膵臓の形態異常が元に戻るということはあるのでしょうか?

今回の研究ではイギリスにおいて、
別個に行われた糖尿病の臨床研究の対象者を活用することにより、
その問題の検証を行っています。

年齢が20から65歳で、
BMIが27から45と過体重から肥満があり、
2型糖尿病と診断されている90名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の糖尿病の治療のみを行い、
もう一方は超低カロリーのダイエット期間から、
体重管理の厳密な治療を継続する、
ダイエット介入をそこに追加して、
2年間の経過観察を行っています。
介入群が64名で、通常治療群が26名、
それ以外に年齢や体重なをマッチングさせた、
糖尿病のない健常コントロール群25名も比較されています。
膵臓の形態は複数回行われたMRI検査で計測されています。

その結果、
登録時における平均の膵臓容積は、
糖尿病患者群トータルで61.7㎠、健常群で79.8㎠で、
糖尿病では有意に膵臓容積が縮小していました。

介入後2年が経過した時点で、
血糖の正常化に成功した介入群では、
膵臓容積が9.4㎠(95%CI:6.1から12.8)増加したのに対して、
血糖が正常化しなかった介入群では、
膵臓容積の増加は6.4㎠(95%CI: 2.5から10.3)に留まっていました。
登録時点で膵臓の辺縁の不整は、
糖尿病群で多く認められ、
介入後に血糖が正常化した群のみで改善していました。

このように、
積極的介入でダイエットを行い、
血糖値が正常化すると、
インスリン分泌が正常化するのみならず、
形態的な膵臓の異常も、
正常化に向かうことが確認されました。

糖尿病は治らない病気と考えられ、
確かにそうした事例も少なからずあるのですが、
その一方で食事や運動の管理を行うことで、
血糖値のみならず膵臓の状態も元に戻る可能性がある、
という今回の知見は大変有意義なもので、
今後どういう患者さんでそうした改善が見込めるのか、
といった検証を含め、
知見が積み重ねられることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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