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新型コロナウイルス検査65000件拡充、の裏側 [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日で休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日は身辺雑記的話です。

新型コロナウイルス感染症は、
未だ国内でも収束の気配を見せていません。
東京は高止まりでかろうじて推移しているという感じで、
急激な増加に向かうリスクも秘めています。
明らかに東京発の感染が、
北海道や大阪で増加を続けています。
仮にこれで東京の感染者が急増して、
旅行の推奨も今のまま続くとすると、
深刻な事態がすぐそこまで迫っている、
という気がします。

もう少し危機感を持つべきではないでしょうか?

現状問題とされているのは、
これから季節性インフルエンザの流行期に入り、
発熱する患者が増加することで、
医療体制が逼迫するのではないか、
という懸念です。

そこで東京都の最近の発表では、
検査可能数を従来の4倍の65000件に拡充し、
全医療機関の4割に当たる2800医療機関で、
発熱患者の診療が出来る体制を整えた、
としています。

「体制を整える」ではなく、
もう「整った」と言っているんですよね。

何故こんなことが可能となったのでしょうか?

今日はその裏側をちょっとお話したいと思います。

クリニックに10月初旬に封書が届き、
それと同じ頃に医師会を通じてファックスも届きました。

内容は「季節性インフルエンザ流行に備えた体制整備にご協力ください!」
というもので、
発熱患者の診療を自院で行なう医療機関は、
対応可能な患者の人数や可能な検査を、
専用のサイトから東京都に申請し、
それを元にして東京都が、
「診療・検査医療機関」の指定を行なうというものです。

クリニックでは発熱患者は、
診察場所を完全に分けて診察をしていますし、
インフルエンザの迅速検査や新型コロナウイルスのRT‐PCR検査も、
既に行政検査の契約を結んで検査をしていますから、
別に協力することはやぶさかではないと言うか、
既に対応をしているのですが、
指定を受けて下さい、ということなので、
真面目にネットから指定を行ないました。

この「お願い」には実は抱き合わせに、
「発熱外来診療体制確保支援補助金」の申請について、
という項目が記載されています。

クリニックで発熱患者を診察することには、
当然感染のリスクがあります。
昨年まではマスク1枚か、
時にはマスクもせずにインフルエンザの検査を行なっていたのですが、
仮にその患者さんが新型コロナウイルス感染症であれば、
油断をしていれば施行している医者が感染してしまいます。
そのため、今年のガイドラインでは、
インフルエンザの検査を行なう際にも、
マスクとゴーグル、手袋に防護衣など、
フル装備で行なうことが求められているのです。

毎回こうした時間を掛けて準備をし診察をするので、
患者さん1人にこれまで以上のエネルギーとコストを要します。

その部分を国や都はどのように考えているのでしょうか?

「発熱外来診療体制確保支援補助金」の内容を読んでみると、
たとえば1日で20人の発熱患者を診察出来るという申請を出し、
それが認められた場合に、
その日10人の患者しか受診をしなかった時には、
その差の10人分の医療費相当分を、
この補助金として補填する、と書かれています。

毎日20人の患者を診ると申請すれば、
その20人分の医療費は、
患者が来なくても補填するというのです。

そんな上手い話があるのでしょうか?

明らかにこの補助金は、
今後の発熱者の増加に対応した体制を作るために、
僕のような弱小の医療機関に与えられた餌なのです。

ただ、実はこれには裏があります。

この補助金は期限内に申請すれば、
そのままの金額が振り込まれるのですが、
それは発熱患者対応に使われることを前提としています。
つまり、それ以外の用途に使うことは許されず、
仮にそうした使用がされなかった場合には、
後日返還が要求されるという仕組みになっています。
更に以前給付がされた、
新型コロナによって経営が悪化した医療機関への、
補助金があるのですが、
それと一体のものとして扱われていて、
総額がそれを超えることも不可となっているのです。

つまり、見かけ上は、
発熱患者を診ることにより、
自動的にお金が入るように思われますが、
実際には色々と条件が付けられていて、
殆ど都の会計から拠出されるお金は微々たるもので、
医療機関としてのメリットは殆どない仕組みなのです。

都から送られて来た資料には、
そうしたことは全く記載されていません。

こうした詐欺まがいの手法により、
2800の医療機関が登録の申請を出し、
そこで検査可能な人数として申請された数字を、
足し合わせたのが都が発表した65000件という検査数になるのです。

税理士さんにその辺りのからくりを聞いたので、
発熱医療機関の登録はしましたが、
補助金の申請はしませんでした。

毎日次々と新型コロナについてのファックスが届き、
それによりまた振り回される日々が続いていますが、
気を引き締めて感染防御に留意しつつ、
冬本番に備えたいと思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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