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新型コロナウイルス感染症退院後60日の予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス退院後60日の経過.jpg
Annals of Internal Medicine誌に、
2020年11月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の、
退院後2ヶ月の予後を検証した短報(レター)です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経過は、
多くの事例では軽症で無症状に近いケースも多いのですが、
重症肺炎などを来して集中治療が必要なケースでは、
その予後は決して楽観出来るものではありません。

また、回復後にも後遺症と思われるような症状が続いたり、
持病の悪化に伴って体調が悪化するなど、
病後の体調不良が多いことも指摘されています。

ただ、その実態は必ずしも明確ではありません。

今回の研究ではアメリカ、ミシガン州の38の病院で、
2020年3月から6月に新型コロナウイルス感染症と診断され、
入院となった1648名の患者の予後を、
退院事例ではその60日後まで追跡検証しています。

その結果、
1648名中24.2%に当たる398名が入院中に死亡しており、
残りの75.8%に当たる1250名が退院しています。
この生きて退院した1250名のうち、
78.0%に当たる975名は自宅に戻り、
12.6%に当たる158名は施設などに入所しています。
退院後60日の時点で、
更に84名の患者が退院後に死亡していて、
結果としてその時点での入院患者全体の死亡率は、
29.2%となっています。
退院後の死亡者は退院患者の6.7%で、
入院中集中治療室に入室していた患者の10.4%でした。
結果として集中治療室に入室した患者のうち、
退院後を含めての死亡率は63.5%でした。
また、退院後60日以内に、
退院患者の15.1%に当たる189名は再入院していました。

退院後60日の時点での生存者のうち、
41.8%に当たる488名は問診が可能で、
咳は呼吸困難などの心臓や呼吸器の症状が、
159名には認められていて、
92名の症状は新型コロナの感染後に発症したか悪化していて、
65名は嗅覚もしくは味覚障害が持続していました。
入院前には働いていた195名のうち、
職場に復帰したのは117名で、
そのうちの30名は入院前により勤務時間が健康上の理由により、
短縮されていました。
残りの78名は健康上の理由で退職したか、
解雇されていました。

このように、
通常の新型コロナウイルス感染症の予後は、
回復して退院した時点で終了と見做されますが、
実際には退院後に長期間体調不良が持続したり、
他の病気を併発したり持病が悪化したりして、
退院後に死亡するケースも多いのが実際です。
退院後60日以上生存していても、
職を失ったり、精神的なダメージから復帰出来ない、
というようなケースも少なくありません。

新型コロナウイルス感染症の予後については、
退院の時点でOKではなく、
より長期の観察を行なって、
それを今後のケアや、
経済的な側面を含めた援助に反映させる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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