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体重減少後のリバウンド阻止における運動とリラグルチドの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
リラグルチドと運動のダイエットう効果論文.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年5月6日掲載された、
肥満のダイエット後のリバウンドを予防するために、
薬と運動療法を併用するという、
興味深い臨床試験結果についての論文です。

肥満は世界中で最も大きな健康問題の1つです。

その解消のために、
多くのダイエット法(体重減少法)が開発され利用されていますが、
食べる量を減らして運動する、
ということ以外に、
科学的に有効性の確認されているものはあまりありません。

たとえば入院して1000キロカロリーを下回るような、
低カロリーのダイエットを、
栄養バランスに留意しながら継続し、
適度な運動療法と組み合わせれば、
間違いなく短期的には体重は減少します。

しかし、退院すれば高率にリバウンドが起こり、
体重は短期間で増加に転じることが多いのが実際です。

これは民間の多くのダイエット法にも一致する現象で、
商売としてのダイエットは、
1か月で何キロ減らします、というようなことは言っても、
それを1年維持します、
というような言い方は決してしません。
それは本当に難しいのはリバウンドの阻止であって、
それを約束したら商売にはならない、
ということを知っているからです。

それでは、ダイエット(体重減少)後のリバウンド予防に、
何か有効な科学的方法はないのでしょうか?

リラグルチド(商品名ビクトーザ)は、
GLP-1アナログと呼ばれる糖尿病治療の注射薬ですが、
主に食欲を抑えるような効果により、
体重減少をサポートすることが確認されていて、
海外では単独でも肥満症の治療薬として、
承認されている国もあります。

それでは、このリラグルチドには、
ダイエット後のリバウンドを予防するような作用はあるのでしょうか?

今回の臨床研究はデンマークにおいて、
BMIが32から43と肥満があって糖尿病はない、
トータル195名にまず1日800キロカロリーという、
超低カロリーの食事療法を導入し、
8週間の治療を継続します。
治療終了後には平均で13.1キロの体重減少が達成されました。

この時点で対象者をくじ引きで4つの群に分けると、
コントロール群は通常の生活指導と偽の注射とし、
運動群は専門のインストラクターによる運動療法を継続して偽の注射を施行、
リラグルチド群は通常の生活指導に加えて、
リラグルチドを1日3.0㎎皮下注射し、
併用群はリラグルチドの注射とインストラクターによる運動療法を併用して、
1年間の経過観察を施行しています。
このリラグルチドの3.0mgというのは、
日本で認められている糖尿病での使用量より、
遙かに高用量です。

その結果はこちらをご覧下さい。
リラグルチドと運動の図.jpg
一番上のグレイのラインが、
何もしなかったコントロール群ですが、
対受有は平均で6キロくらいリバウンドしています。

それに比べて緑のラインの運動群は、
2キロくらいのリバウンドに留まっています。
コントロールと比較した差は-4.1キロ(95%CI:-7.8から-0.4)です。

次に青のラインのリラグルチド群は、
有意なリバウンドはしておらず、
コントロールと比較した差は-6.8キロ(95%CI:-10.4から-3.1)で、
最後に赤のラインの併用群では、
明確に開始時より体重減少が認められ、
開始時より平均で3.4キロ減少し、
コントロールと比較した差は-9.5キロ(95%CI:-13.1から-5.9)となっていました。

このように、
運動単独やリラグルチド単独でも、
リバウンドの予防効果は認められますが、
両者を併用することによる効果は顕著で、
今後こうした2段階の治療、
すなわちまず低カロリーで体重減少を短期間で達成し、
それからリバウンド予防の治療にシフトする、
という方法は、
肥満症の治療として、
非常に有効な治療の選択肢となりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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