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アスピリンの用量と心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アスピリンの用量と効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年5月15日ウェブ掲載された、
臨床で非常に多く使用されている低用量アスピリンの、
適正な用量についての論文です。

アスピリンは消炎鎮痛剤であると共に、
抗血小板剤として広く使用されています。
特に心筋梗塞などの動脈硬化に伴う疾患の罹患後に、
その再発予防や予後改善のための有効性は、
精度の高い臨床試験によって確認されていて、
安価な薬であることもあり、
世界的に広く使用されている薬剤です。

ただ、その用量については世界的には明確な基準がありません。
日本では概ね1日81㎎、もしくは100㎎の腸溶剤が使用されていますが、
海外ではより高用量の325㎎が使用されていることも多く、
そのどちらが適切であるのかについては、
未だ正解が得られているとは言い難い状態です。

今回の臨床研究はその点を明らかにしようとしたもので、
アメリカ国内の複数施設において、
心筋梗塞などの心血管疾患の既往のある、
トータル15076名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方はアスピリンを1日81㎎で継続し、
もう一方は1日325㎎で継続して、
中間値で26.2か月の経過観察を行い、
その心血管疾患などの予後と、
アスピリンに伴う出血系合併症の頻度などを比較検証しています。

その結果、
観察期間中の死亡、心筋梗塞や脳卒中による入院を併せたリスクは、
両群で有意な差はなく、
出血系合併症による入院のリスクについても、
両群で有意な差は認められませんでした。

このように1日81㎎でも325㎎でも、
明確なその効果や有害事象には差がない、
というのが今回の結果で、
現状日本においては、
1日81から100㎎の使用を続けることで、
大きな問題はないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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