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BMIと人種差と糖尿病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMIと人種差と糖尿病.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2021年5月11日ウェブ掲載された、
体格の指標であるBMIという数値の人種差についての論文です。

肥満が大きな健康リスクであることは、
世界中で認識されている間違いのない事実です。

ただ、肥満の基準については、
人種による差があるのでは、という議論があり、
世界的に明確な基準が定められている、
という訳ではありません。

WHOは1993年に、
キログラムの体重をメートルの身長で2回割った数値である、
BMIという指標が、
25.0から29.9を過体重、
30.0以上を肥満として定義しています。

ただ、たとえば2型糖尿病の発症リスクで考えると、
確かに白人種ではBMIが30.0以上で、
明確にそのリスクが高まりますが、
日本人を含むアジア人種では、
より低いBMIでも糖尿病リスクが高まる、
という複数のデータがあり、
2004年にWHOの専門会議は、
南アジア人種と中国人種では、
BMIが27.5以上を積極的生活改善の指標とするべきだ、
という声明を発表しています

今回の検証はイギリスで行われたもので、
白人種におけるBMIが30.0以上での糖尿病リスクが、
他の人種ではどのくらいのBMIで同等となるのかを、
一般住民1472819名の対象者で検証しています。
このうち、90.6%に当たる1333816名は白人種で、
5.2%に当たる75956名が南アジア人種、
3.4%に当たる49349名が黒人種、
0.7%に当たる10934名が中国人種、
0.2%に当たる2764名がアラブ人種です。

解析結果はこちらをご覧下さい。
BMIと人種差と糖尿病の図.jpg
糖尿病発症リスクの人種差を図示したものですが、
白人種でBMI30.0に匹敵する糖尿病リスクは、
南アジア人種ではBMI23.9となり、
黒人種では28.1、中国人種では26.9、
アラブ人種では26.6となっていました。

つまり、白人種と比較して、
アジアを含むほかの人種では、
より低いBMIでも糖尿病リスクは増加していて、
それに応じた基準の変更が必要であるようです。

日本においては、
肥満学会の基準でBMI25以上を肥満としており、
その基準は今回の結果からは、
概ね妥当なものとそう考えても良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように

石原がお送りしました。
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