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肥満や過体重と新型コロナウイルス感染症重症化との関連について(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMIと新型コロナウイルス感染症.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2021年4月28日ウェブ掲載された、
体格の指標であるBMIと、
新型コロナウイルス感染症の予後との関連についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクとして、
高血圧などと共に指摘されることが多いのが肥満です。

肥満では新型コロナウイルス感染症による、
重症化のリスクが増加したとする報告が複数見られます。

ただ、その殆どは、
BMIが30以上を肥満と定義して、
そのあるなしで重症化のリスクを比較しているだけのデータです。

心血管疾患とBMIや死亡リスクとの関連は、
概ね22から25くらいが最も低リスクで、
それより低くても高くても、
共にリスクの増加が認められる、
というような報告が多いのですが、
新型コロナウイルスの重症化や生命予後についても、
同様の傾向が認められるのでしょうか?

その点はまだ明確ではありません。

今回のデータはイギリスのプライマリケアのデータを活用して、
20歳以上で新型コロナウイルス感染症に罹患した、
6910695名という膨大なデータを解析して、
体格の指標であるBMIと、
新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡リスクとの関連を、
比較検証しています。

その結果、
BMIと新型コロナウイルス感染症による入院リスクと死亡リスクとの間には、
BMIが23が最も低リスクで、
それより低くても高くてもリスクは増加する、
という関連が認められました。
その一方で新型コロナウイルス感染症により集中治療室に入室するリスクは、
BMIが1増加するにつれ10%増加する、
という直線的な関係が認められました。

このBMI上昇に伴う重症化と死亡リスクの増加は、
年齢は40歳未満の若年層でより顕著で、
人種では黒人種でより顕著という特徴が認められました。

このように、
今回の大規模な疫学データの解析から、
BMIが23を超える過体重と肥満は、
新型コロナウイルス感染症の、
独立した重症化リスクであることはほぼ間違いがなく、
それが何故重症化の条件により傾向が異なるのか、
その重症化のメカニズムは何なのかなど、
不明な点は多いのですが、
今後のより突っ込んだ検証を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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