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2種類の新型コロナワクチンの高齢者に対する1回接種での有効性(イギリスの大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ファイザーとアストロゼネカワクチンの1回接種効果比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年5月13日ウェブ掲載された、
高齢者における単回の新型コロナウイルスワクチンの予防効果を、
比較検証した論文です。

これは現状可能な部分に限って解析した、
というような不充分な内容で、
少しアストロゼネカ社に忖度しているのかな、
というような感じもする内容なのですが、
一応記録として取り上げておくことにします。

ファイザー・ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチンに、
有症状感染を90%以上予防する効果がある、
という点については、
多くの臨床データや疫学データで確認されており、
ほぼ実証された事実と言って良いと思います。

ただ、不明な点もまだ残っています。

まず、臨床試験には高齢者はあまり含まれていないので、
感染した場合に重症化や死亡リスクの高い、
高齢者への有効性が若年者と違いがないのか、
という点がまだ不明瞭です。

それから、
従来株の感染と変異株の感染における有効性に、
どの程度の差があるのかもまだ不明瞭です。

更には、
このワクチンは2回接種が必要とされていますが、
1回でも一定の有効性があるという意見もあり、
既感染者では1回でも良いのではないか、
というような意見もあります。
1回の接種でどの程度の効果があるのかについても、
実地臨床でのデータは充分とは言えません。

イギリスはワクチン接種では世界でも先頭を走っている国の1つですが、
接種開始から今に至る方針には試行錯誤がありました。
まず、ファイザー・ビオンテック社のワクチンが先行接種され、
それから遅れてアストラゼネカ社のワクチンが接種開始されました。
当初は3から4週間隔での2回接種が必要とされていましたが、
途中で集団感染を早く確立する意味から、
1回接種で接種人数を増やした方が良いのでは、
という意見や、
接種間隔はより長くても良いのではないか、
という意見があり、
1回のみの接種が広く行われたり、
接種間隔を最大で12週間と、
長く設定するような試みも行われました。

そのデータを解析することにより、
高齢者の1回接種のみの有効性が解析可能となったのです。

今回70歳以上の156930名の新型コロナウイルス感染症の感染者と、
ワクチン接種履歴との比較により、
その解析が行われています。

その結果、
ファイザー・ビオンテック社のワクチンを、
1回のみ接種した80歳以上の高齢者の、
接種後10から13日以降の有症状感染予防効果は、
70%(95%CI:59 から78)に達し、
2回接種した高齢者では、
接種後14日以降の予防効果は、
89%(95%CI:85 から93)に達していました。

アストラゼネカ社のワクチンを、
同様に1回のみ接種した70歳以上の高齢者の、
有症状感染予防効果は、
接種後14日から20日から有意に認められ、
接種後28から34日では61%(51から69%)に達し、
35日以降は73%(27から90%)に達していました。

それに加えて、
いずれのワクチンも1回の接種で、
新型コロナウイルス感染により入院するリスクを80%、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンは、
単回接種で死亡リスクを、
85%低下させていました。

このデータは英国株(B.1.1.7)による感染流行期のもので、
この結果は英国株優位の感染においても、
ほぼ同等の有効性があると考えられました。

今回のデータは単回接種において、
ファイザー・ビオンテック社、アストラゼネカ社、
いずれのワクチンも同程度の有効性を、
70歳以上の高齢者において示した、
という期待の持てるものですが、
ややアストラゼネカ社のワクチンに都合の良い結果で、
単回接種で実際に感染拡大を抑えられるのかも不明ですから、
かなり不充分なものですが、
高齢者における有用性を示した点では意義があり、
今後より精度の高い検証が行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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