新型コロナウイルスに対する中国製不活化ワクチンの有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2021年5月21日ウェブ掲載された、
中国で開発された新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
臨床試験結果をまとめた論文です。
新型コロナウイルスワクチンには、
現在日本で接種が行われている、
2種類のmRNAワクチン以外に、
アストラゼネカ社などで開発された、
複数のウイルスベクターワクチン、
ノババックス社のナノパーティクルワクチン、
不活化ワクチンに区分される、
中国製などの複数のワクチンなどがあり、
現在実際に使用されています。
今回のデータは、
中国で開発された2種類の不活化ワクチンの、
第3相臨床試験の中間報告的なものです。
この2種類のワクチンは、
WIV04とHB02と命名されていて、
その由来するウイルスの系統が少し異なるだけで、
その製法自体は同じワクチンです。
培養細胞にウイルスを感染させて増殖させ、
それをβプロピオラクチンという薬品処理で不活化して、
感染力を持たないようにしたものです。
現行の季節性インフルエンザワクチンは、
スプリットワクチンと言って、
ウイルスの一部の抗原のみを使用するものですが、
論文の記載を読む限り、
今回の不活化ワクチンは、
不活化したウイルスをそのまま使用する、
全粒子ワクチンというタイプに近いもののようです。
利点としては安定性が高いので、
2度から8度程度の低温で長期間保存が可能で、
今のインフルエンザワクチンと同じような管理が可能であることです。
ただ、インフルエンザワクチンでも、
全粒子ワクチンはかなり発熱などの副反応は多く、
アナフィラキシーなどの発症も、
現行のスプリットワクチンよりは多かったので、
この新型コロナウイルス不活化ワクチンが、
他のmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンと比較して、
安全性に優れているとは言い切れません。
今回の臨床試験は、
中東のアラブ首長国連邦とバーレーンにおいて2020年に行われたもので、
2種類の不活化ワクチンのいずれかを、
1回以上接種した40382人を対象とし、
2回の接種を終えて14日後以降の、
有症状の新型コロナウイルス感染症の発症リスクを、
添加物のアルミニウムのみの偽ワクチンと比較検証しています。
その結果、
偽ワクチンと比較した不活化ワクチンの有効率は、
WIV04ワクチンで72.8%、HB02ワクチンで78.1%と算出されました。
有害事象は主に接種部位の痛みなどで、
重篤なものの報告は偽ワクチン群と差はありませんでした。
つまり、mRNAワクチンの、
95%という有効率には及びませんが、
他のウイルスベクターワクチンなどと比較すれば、
遜色のない有症状感染の予防効果と言って良い結果です。
ただ、
この臨床試験の実施時期には、
当該地域で変異株の感染は主体ではなく、
これは従来株への効果で、
変異株への有効性は未知数です。
観察期間の中間値も77日ですから、
それほど長いとは言えません。
いずれにしても、
これだけ多彩なメカニズムのワクチンが、
1つの感染症に対して用いられたことは、
歴史上にも例のない事態で、
今後その安全性の比較を含め、
科学的な検証の結果を注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2021年5月21日ウェブ掲載された、
中国で開発された新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
臨床試験結果をまとめた論文です。
新型コロナウイルスワクチンには、
現在日本で接種が行われている、
2種類のmRNAワクチン以外に、
アストラゼネカ社などで開発された、
複数のウイルスベクターワクチン、
ノババックス社のナノパーティクルワクチン、
不活化ワクチンに区分される、
中国製などの複数のワクチンなどがあり、
現在実際に使用されています。
今回のデータは、
中国で開発された2種類の不活化ワクチンの、
第3相臨床試験の中間報告的なものです。
この2種類のワクチンは、
WIV04とHB02と命名されていて、
その由来するウイルスの系統が少し異なるだけで、
その製法自体は同じワクチンです。
培養細胞にウイルスを感染させて増殖させ、
それをβプロピオラクチンという薬品処理で不活化して、
感染力を持たないようにしたものです。
現行の季節性インフルエンザワクチンは、
スプリットワクチンと言って、
ウイルスの一部の抗原のみを使用するものですが、
論文の記載を読む限り、
今回の不活化ワクチンは、
不活化したウイルスをそのまま使用する、
全粒子ワクチンというタイプに近いもののようです。
利点としては安定性が高いので、
2度から8度程度の低温で長期間保存が可能で、
今のインフルエンザワクチンと同じような管理が可能であることです。
ただ、インフルエンザワクチンでも、
全粒子ワクチンはかなり発熱などの副反応は多く、
アナフィラキシーなどの発症も、
現行のスプリットワクチンよりは多かったので、
この新型コロナウイルス不活化ワクチンが、
他のmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンと比較して、
安全性に優れているとは言い切れません。
今回の臨床試験は、
中東のアラブ首長国連邦とバーレーンにおいて2020年に行われたもので、
2種類の不活化ワクチンのいずれかを、
1回以上接種した40382人を対象とし、
2回の接種を終えて14日後以降の、
有症状の新型コロナウイルス感染症の発症リスクを、
添加物のアルミニウムのみの偽ワクチンと比較検証しています。
その結果、
偽ワクチンと比較した不活化ワクチンの有効率は、
WIV04ワクチンで72.8%、HB02ワクチンで78.1%と算出されました。
有害事象は主に接種部位の痛みなどで、
重篤なものの報告は偽ワクチン群と差はありませんでした。
つまり、mRNAワクチンの、
95%という有効率には及びませんが、
他のウイルスベクターワクチンなどと比較すれば、
遜色のない有症状感染の予防効果と言って良い結果です。
ただ、
この臨床試験の実施時期には、
当該地域で変異株の感染は主体ではなく、
これは従来株への効果で、
変異株への有効性は未知数です。
観察期間の中間値も77日ですから、
それほど長いとは言えません。
いずれにしても、
これだけ多彩なメカニズムのワクチンが、
1つの感染症に対して用いられたことは、
歴史上にも例のない事態で、
今後その安全性の比較を含め、
科学的な検証の結果を注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。