SSブログ

新型コロナウイルスの環境汚染と感染リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの感染経路.jpg
JAMA誌に2020年3月4日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの周辺への汚染と、
感染リスクについてのレターです。

新型コロナウイルスの感染経路は、
飛沫感染と接触感染が主なものとして想定されていますが、
ウイルスを含む飛沫などが付着した、
部屋の壁や家具などに、
触れることによって生じる接触感染については、
あまり正確なことが分かっていません。

そこで今回の研究ではシンガポールにおいて、
クリーンルームに隔離されて治療を受けている、
新型コロナウイルス感染症の3人の患者を対象として、
空気のサンプルや病室の26カ所の表面サンプルを複数回採取して、
ウイルス遺伝子をPCRで検出しています。

3名の患者はいずれも症状はありましたが、
2名は咳に発熱を伴う状態で、
残りの1名は咳のみの症状で発熱はない状態でした。
発熱のある2名は病室のクリーニング後に、
軽症の1例ではクリーニング前に検体採取が行われました。

その結果、
発熱のある2例のクリーニング後の検体では、
全てウイルス遺伝子は陰性でしたが、
発熱のない軽症事例のクリーニング前の検体では、
部屋の15カ所のうち87%に当たる13カ所で、
トイレの5カ所のうち60%に当たる3カ所で、
ウイルス遺伝子が検出されました。

ウイルスが部屋から検出された患者では、
下痢などの症状はなかったにも関わらず、
便のサンプルからはウイルス遺伝子が検出されました。
便器とシンクからウイルスは検出されていて、
このことは気道からの検体以外に、
便を介したウイルスの付着の可能性も、
否定出来ないと考察されています。

このように、
適切に消毒などの処置を行えば、
接触感染のリスクは低下させることが可能である一方、
今回の検出事例のように、
発熱もないような軽症であっても、
ウイルスを周辺には拡散していて、
下痢がなくても便から感染が拡大する、
という可能性も否定出来ません。

どうやらウイルスを周辺にまき散らすという性質と、
病気としての重症度とは、
常に一致しているということではなさそうです。

今回の新型コロナウイルス感染症は、
8割は軽症である一方、
潜伏期が長く、経過自体も長く、
症状の軽い患者さんでも、
周辺に感染を拡大するリスクが高い、という点が、
真に厄介なポイントであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0)