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新型コロナウイルス肺炎のARDSへの進展とその特徴 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ARDSとコロナウイルス.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年3月13日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス肺炎の中国の単独施設における、
201名の患者の解析です。

その進展はともかく目まぐるしいので、
やや周回遅れの感じもするデータですが、
記録のためにまとめておきます。

これは武漢市金銀潭病院(Wuhan Jinyintan Hospital)での、
2019年12月25日から2020年1月20日に新型コロナウイルス肺炎と診断された、
201例の入院事例をまとめて解析したものです。

ここは武漢市での初期治療に当たった病院で、
1月29日のLancet誌には、
2020年1月1日から20日の入院事例99例をまとめた論文が、
既に掲載されています。

今回の論文は独立したものと言うより、
そのLancet論文のアップデート版とでも言うべきもので、
事例はより増え、観察期間も2月13日までと延長されています。

201例の肺炎事例の年齢の中央値は51歳で、
全体の63.7%に当たる128名が男性です。

イタリアのデータでも6割が男性となっていますから、
この病気がやや男性に多く発症している、
ということはほぼ間違いがなさそうです。

ただ、当初言われていたほどの性差はなく、
その意味合いも現時点では不明です。

このうちの41.8%に当たる84名が、
高度の呼吸不全である急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、
発症した84名のうち52.4%に当たる44名が死亡しています。
以前のLancetの論文では死亡は11名でしたから、
3週間弱の間に死亡者は急増していることが分かります。

ここでARDSやそれによる死亡のリスクと関連のある因子をみると、
65歳以上の高齢であることは、
ARDSに移行するリスクを3.26倍(95%CI: 2.08から5.11)、
死亡するリスクを6.17倍(95%CI: 3.26から11.67)、
それぞれ有意に増加させていました。
白血球減少、血液のLDHやDダイマーも高値も、
ARDSや死亡のリスクを増加させる因子となっていました。
一方で39度以上の高熱が出た患者さんはそうでない場合と比較して、
ARDSに移行するリスクは1.77倍(95%CI:1.11から2.84)と増加していましたが、
死亡のリスクは59%(95%CI: 0.21から0.82)と有意に低下していました。
ARDSの患者さんのうち、
ステロイドのメチルプレドニゾロンを使用したケースでは、
死亡のリスクは62%(95%CI: 0.20から0.72)有意に低下していました。

この論文ではステロイド治療に有効性が認められているのですが、
その後の臨床データではこの見解を否定するものが多く、
新型コロナウイルス肺炎に起因するARDSに対して、
ステロイド治療が有効であるかどうかは、
まだ結論が出ていない事項と考えた方が良いようです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
8割が軽症で回復する一方、
重症肺炎は高率にARDSを来して死亡リスクが高く、
現時点で確実な治療は存在していません。
臨床事例を積み重ねることにより、
その対応策は明確となることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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