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新型コロナウイルスの実際の死亡率はどのくらいか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの死亡率.jpg
Lancet Infectious Disease誌の2020年3月12日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の死亡率についての解説記事です。

少し古いデータですが、
2020年3月1日の時点で、
中国では新型コロナウイルスのPCR陽性者が79968名で、
中国国外では7169名でした。

中国国内では2873名が死亡しているので、
その死亡率は3.6%となり、
中国国外では104名が死亡しているので、
その死亡率は1.5%となります。

しかし、これは単純にその時点での死者数を、
その時点での感染者数で割り算したものなので、
その病気に罹った患者さんのうち、
どれだけが死亡したのかを正確に示している数値ではありません。

ある時点で新型コロナウイルス感染症のために死亡した人は、
概ねその1週間以上前にその病気を発症した人で、
更に言えばその数日から2週間以上前に感染した人であるからです。

そこで今公表されているデータを、
死亡者はその2週間前に感染したと仮定して、
2週間前の感染確認者と割り算するように計算し直します。

そうして得られたグラフがこちらになります。
コロナウイルスの死亡率の図.jpg
下にほぼ変わらない赤いラインで示されているのは、
WHOが公表している世界の死亡率です。
概ね5%以下の同じレベルで推移しているように見えます。

一方で上の青いラインは、
それを2週間前の患者数で割り算したものです。
アウトブレイク当時の武漢市では、
20%を超えるような高い死亡率を示していて、
それがその後は急激に減少し、
現状では5.7%という、
WHOの発表と同じ水準まで低下していることが分かります。

今のイタリアの状況は、
単純計算でも死亡率が20%を超えていますから、
比較的狭い地域で爆発的な感染拡大が起こると、
その時点では死亡率は2割を超え、
感染がある程度コントロールされると数パーセントに落ち着く、
というのは現状の判断としては妥当であるようです。

こうした単純な数字1つを取っても、
集計の仕方によって印象は大きく変わります。

そこにはそれなりの意図がある場合もあり、
無自覚である場合もありますが、
私達もこうした数値の解釈には、
より慎重になべきではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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