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血圧低下への塩分制限の有効性(2020年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ナトリウムと血圧.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
塩分の摂取量と血圧についてのメタ解析の論文です。

塩分は毎日どのくらい摂るのが最も健康的なのでしょうか?

これはまだ完全には解決されていない問題です。

日本人は欧米人と比較すると、
伝統的な食生活においては、
塩分が多く脂質は少ないという特徴がありました。

かつての日本人は平均で1日20グラム以上という、
非常に沢山の塩分を摂っていて、
そのために脳卒中や胃癌が多かったのです。

その一方で欧米では、
塩分の摂取はそれほど多くない一方で、
脂質の摂取量は多く、
そのために心筋梗塞が多かったのです。

高血圧は脳卒中のリスクにもなり、
また心筋梗塞のリスクにもなりますが、
塩分の摂取量を減らすことにより、
高血圧の患者さんでは血圧が減少することが実証され、
そのことから、
塩分は制限すればするほど健康的である、
という考えが一般にも広まりました。

WHOは2025年までに、
塩分の摂取量を1日5グラム未満にすることを目標に掲げています。

ただ、生命予後と塩分の摂取量との関連を検証した疫学研究では、
1日の塩分量は7から10グラムくらいが最も生命予後は良く、
それを上回っても下回っても悪化する、
というような複数の報告があり、
この問題を複雑にしています。

今回の研究は、
これまでの臨床データをまとめて解析する、
システマティック・レビューとメタ解析という手法を用いて、
塩分制限と血圧の低下が相関するのかをメインに、
これまでより詳細に、
塩分制限と血圧との関連を検証しています。

133の臨床研究のトータル12197名のデータを、
まとめて解析した結果として、
塩分摂取量の指標である、
尿中ナトリウム排泄量が50mmol(およそ2.9g)減る毎に、
収縮期血圧は1.10mmHg(95%CI: 0.66から1.54)低下し、
拡張期血圧は0.33mmHg(95%CI:0.04から0.63)低下する、
という一貫した関連が認められました。

同じ尿中ナトリウム排泄量の低下に対して、
高齢者、白人種以外、収縮期血圧高値では、
より血圧低下は大きくなる、という傾向が認められました。
介入期間が2週間を超えないような試験では、
ナトリウム排泄量低下に伴う血圧の低下は少なく、
減塩の血圧降下には、
2週間以上を要することが示唆されました。

このように今回の検証では、
これまでのデータより明確に、
ナトリウム制限による血圧の降下作用が確認されました。

高血圧の患者さんに対して、
まずは減塩の指導をするという方針は、
最新の知見においても、
動かないものと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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