「デッド・ドント・ダイ」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジム・ジャームッシュ監督の新作は、
70年代テイストのゾンビ映画で、
いつも通り真面目なのかふざけているのか分からない、
オフ・ビートなタッチは健在です。
ジャームッシュ監督というと、
2017年日本公開の「パターソン」が大傑作で、
その年のぶっちぎりのマイベストでした。
ただ、ジャームッシュ監督の本領は、
矢張りあの感動というよりは「すかし」だと思うので、
今回の作品は監督の通常運転の水準作、
という感じで鑑賞しました。
アメリカの田舎町にある日ゾンビが発生し、
町を飲み込んで破滅させてゆきます。
映像は粒子の粗い暗い画面で、
70年代に粗製乱造された低予算ホラー映画を意識しています。
内容自体もエネルギー開発で地軸がずれ、
死者が復活するというデタラメ科学や、
墓地からゾロゾロゾンビが現れるビジュアル、
町中に災厄が広がる段取りなども、
かつての低予算ホラー映画そのものです。
あまりネタバレは避けたいので細かくは触れませんが、
SF的設定がクロスするのも、
当時比較的良くあった趣向です。
前半はじっくり時間を掛けて、
ゾンビ出現前の町の住民達の描写を、
ジャームッシュ得意の人物スケッチとして描いています。
そして後半になるとゾンビがじゃんじゃん出現し、
見せ場満載の描写が続きます。
ただ、それほど目新しい感じの描写はありません。
CGなども使ってはいますが、
基本は70年代から80年代のゾンビ映画の描写を、
なぞっているという感じです。
それではこの映画はどういう意図で作られたのかしら?
単純に70年代のゾンビ映画を再現したかったのか、
と言うと、
多分半分くらいはその思いがあったのではないかと思うのですね。
ただ、現代の目からそれを茶化しているような部分もあり、
監督の名前をキャストが口にするような、
メタフィクション的な展開もあります。
ゾンビは結局、生きている時の物に対する執着が、
そのまま死後も続いているので、
物質文明批判なのかしら、
というように最後まで観ると思えなくもありません。
ただ、全ては結局はモヤっとしていて、
正体不明のような部分が残ります。
この映画を楽しめるかどうかは、
その宙ぶらりんな感じ、
真面目なのか不真面目なのか分からないという感じを、
楽しめるかどうかに掛かっている、
という気がします。
キャストはやや過剰なほど豪華です。
特異なキャラがゾロゾロと登場しますが、
僕の好みは何と言ってもイギリスの怪優ティルダ・スウィントンで、
男女を問わず演じ分けるばかりか、
魔女からエスパー、ヒーローから怪物まで、
涼しい顔で演じるカリスマですが、
今回は柔道着みたいな衣装に身を包んで、
日本刀でバッサバッサとゾンビの首を刎ねる艶姿には、
唖然として見惚れるしかありませんでした。
そんな訳で個人的には結構楽しめましたが、
万人向きではないことは確かで、
ゾンビ映画やホラーのファン、
ジャームッシュのまったり感が好きな方にはお勧めですが、
たまに映画でも観ようか、という向きには、
とてもお勧めは出来ない1本です。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジム・ジャームッシュ監督の新作は、
70年代テイストのゾンビ映画で、
いつも通り真面目なのかふざけているのか分からない、
オフ・ビートなタッチは健在です。
ジャームッシュ監督というと、
2017年日本公開の「パターソン」が大傑作で、
その年のぶっちぎりのマイベストでした。
ただ、ジャームッシュ監督の本領は、
矢張りあの感動というよりは「すかし」だと思うので、
今回の作品は監督の通常運転の水準作、
という感じで鑑賞しました。
アメリカの田舎町にある日ゾンビが発生し、
町を飲み込んで破滅させてゆきます。
映像は粒子の粗い暗い画面で、
70年代に粗製乱造された低予算ホラー映画を意識しています。
内容自体もエネルギー開発で地軸がずれ、
死者が復活するというデタラメ科学や、
墓地からゾロゾロゾンビが現れるビジュアル、
町中に災厄が広がる段取りなども、
かつての低予算ホラー映画そのものです。
あまりネタバレは避けたいので細かくは触れませんが、
SF的設定がクロスするのも、
当時比較的良くあった趣向です。
前半はじっくり時間を掛けて、
ゾンビ出現前の町の住民達の描写を、
ジャームッシュ得意の人物スケッチとして描いています。
そして後半になるとゾンビがじゃんじゃん出現し、
見せ場満載の描写が続きます。
ただ、それほど目新しい感じの描写はありません。
CGなども使ってはいますが、
基本は70年代から80年代のゾンビ映画の描写を、
なぞっているという感じです。
それではこの映画はどういう意図で作られたのかしら?
単純に70年代のゾンビ映画を再現したかったのか、
と言うと、
多分半分くらいはその思いがあったのではないかと思うのですね。
ただ、現代の目からそれを茶化しているような部分もあり、
監督の名前をキャストが口にするような、
メタフィクション的な展開もあります。
ゾンビは結局、生きている時の物に対する執着が、
そのまま死後も続いているので、
物質文明批判なのかしら、
というように最後まで観ると思えなくもありません。
ただ、全ては結局はモヤっとしていて、
正体不明のような部分が残ります。
この映画を楽しめるかどうかは、
その宙ぶらりんな感じ、
真面目なのか不真面目なのか分からないという感じを、
楽しめるかどうかに掛かっている、
という気がします。
キャストはやや過剰なほど豪華です。
特異なキャラがゾロゾロと登場しますが、
僕の好みは何と言ってもイギリスの怪優ティルダ・スウィントンで、
男女を問わず演じ分けるばかりか、
魔女からエスパー、ヒーローから怪物まで、
涼しい顔で演じるカリスマですが、
今回は柔道着みたいな衣装に身を包んで、
日本刀でバッサバッサとゾンビの首を刎ねる艶姿には、
唖然として見惚れるしかありませんでした。
そんな訳で個人的には結構楽しめましたが、
万人向きではないことは確かで、
ゾンビ映画やホラーのファン、
ジャームッシュのまったり感が好きな方にはお勧めですが、
たまに映画でも観ようか、という向きには、
とてもお勧めは出来ない1本です。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。