カムカムミニキーナ「狼狽~不透明な群像劇~」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
よくここまで続いたものだと、
感心するカムカムミニキーナの新作公演、
「狼狽~不透明な群像劇~」を観て来ました。
この劇団は1990年の創立時から松村武さんの劇作で、
八嶋智人さんが看板役者という体制で、
25年以上継続されているという点が凄くて、
劇団鳥獣戯画など、
他にも息の長い小劇場はない訳ではありませんが、
同じような規模とスタンスで、
公演を打ち続けているという点はとても感心します。
昔はモロに野田秀樹さんのコピー劇団、
と言う感じが強かったのですが、
そのうちに本家の野田さんの劇作は、
あまり以前のような目まぐるしさや跳躍感がなくなり、
松村さんの劇作も、
昔の遊眠社的なテイストは残しながらも、
もっと土臭い感じや日本神話的民俗学的テーマに移って行ったので、
今回の作品などには、
もうあまり遊眠社という感じはありませんでした。
今回の作品は文盲のベストセラー作家の謎を解くために、
フリーライターの女性が土着の信仰の残る作家の出身地の村に潜入、
そこで奇怪な出来事に巻き込まれるという話ですが、
如何にも松尾スズキさん的設定ではありながら、
かなり目まぐるしく様式的な演出なので、
そうした感じにはならず、
途中から神話的世界が暴走する感じになって、
最後は何が何やら分からないままに、
村自体が水没して滅んで終わりになります。
もう少し丁寧な語り口で、
話を拡散させない方が良かったのではないかしら、
というようにも思うのですが、
この荒くれめいた感じは、
良くも悪くもカムカムミニキーナの特徴なので、
開き直って楽しく身をゆだねるのが正解なのかも知れません。
役者は皆小さな役まで非常に魅力的で、
八嶋さんは今回は役が小さめでややガッカリですが、
いつもの技量は矢張り楽しく、
怪物女優の藤田記子さんとナイロンの新谷真弓さんが、
同じ人物の両面を同じ衣装で演じたり、
文盲作家の松村さんの雰囲気や、
鞭を振るう長谷部洋子さんの艶っぽさに、
犬と化す吉田晋一さんなどとても楽しく、
昔の大人計画を観るような感じで、
怪優大行進を心踊りながら鑑賞しました。
これからも頑張って下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
よくここまで続いたものだと、
感心するカムカムミニキーナの新作公演、
「狼狽~不透明な群像劇~」を観て来ました。
この劇団は1990年の創立時から松村武さんの劇作で、
八嶋智人さんが看板役者という体制で、
25年以上継続されているという点が凄くて、
劇団鳥獣戯画など、
他にも息の長い小劇場はない訳ではありませんが、
同じような規模とスタンスで、
公演を打ち続けているという点はとても感心します。
昔はモロに野田秀樹さんのコピー劇団、
と言う感じが強かったのですが、
そのうちに本家の野田さんの劇作は、
あまり以前のような目まぐるしさや跳躍感がなくなり、
松村さんの劇作も、
昔の遊眠社的なテイストは残しながらも、
もっと土臭い感じや日本神話的民俗学的テーマに移って行ったので、
今回の作品などには、
もうあまり遊眠社という感じはありませんでした。
今回の作品は文盲のベストセラー作家の謎を解くために、
フリーライターの女性が土着の信仰の残る作家の出身地の村に潜入、
そこで奇怪な出来事に巻き込まれるという話ですが、
如何にも松尾スズキさん的設定ではありながら、
かなり目まぐるしく様式的な演出なので、
そうした感じにはならず、
途中から神話的世界が暴走する感じになって、
最後は何が何やら分からないままに、
村自体が水没して滅んで終わりになります。
もう少し丁寧な語り口で、
話を拡散させない方が良かったのではないかしら、
というようにも思うのですが、
この荒くれめいた感じは、
良くも悪くもカムカムミニキーナの特徴なので、
開き直って楽しく身をゆだねるのが正解なのかも知れません。
役者は皆小さな役まで非常に魅力的で、
八嶋さんは今回は役が小さめでややガッカリですが、
いつもの技量は矢張り楽しく、
怪物女優の藤田記子さんとナイロンの新谷真弓さんが、
同じ人物の両面を同じ衣装で演じたり、
文盲作家の松村さんの雰囲気や、
鞭を振るう長谷部洋子さんの艶っぽさに、
犬と化す吉田晋一さんなどとても楽しく、
昔の大人計画を観るような感じで、
怪優大行進を心踊りながら鑑賞しました。
これからも頑張って下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「セールスマン」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
朝は選挙に行き、
夕方までは家にいて、
夜は「ゴキブリコンビナート」の本公演に、
わざわざお金を払って、
ひどい目に遭いに行きます。
汚れても良い服と合羽、
汚い靴を揃えて臨戦態勢です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
今年の米アカデミー外国語映画賞に輝いた、
イランのアスガー・ファルハディ監督による新作映画を観て来ました。
イランのテヘランが舞台になっていますが、
日本の高度成長期に近いような都市生活が描かれていて、
全く違和感はありません。
内容はある若いインテリの夫婦の関係性が、
ある事件をきっかけとして、
その根底から崩れてしまうという物語で、
そこにアーサー・ミラーの「セールスマンの死」を、
絡めてある辺りが面白く、
事件自体は妻が正体不明の人物に襲われて負傷する、
というもので、
その真相を夫が追求する段取りや、
後半に設けられた密室劇的なサスペンスは、
ヒッチコックの映画を彷彿とさせます。
巻頭、工事で自宅の高層アパートが崩れそうになるのを、
長回しで捉えた緊迫感も良いですし、
妻が襲われるシークエンスは、
静かに開かれたドアだけで暗示したり、
ラストは一転演劇を思わせる密室での、
緊迫した遣り取りと意外な展開も面白いと思います。
イラン映画ということで、
理解にややハードルが高いことを覚悟して観たのですが、
意外に語り口は親切で分かりやすく、
物語も謎めいていて魅力的なので、
グイグイと引き込まれます。
ラスト辺りの展開をどう感じるかで、
この作品の好き嫌いは分かれるという気がします。
人間が人間を罰することは出来ない、
というのがテーマの1つであることは間違いがないと思うのですが、
夫が悪いことは事実としても、
男の立場から見ると、
被害者の妻のその後の言動も、
あまりに一貫性がなくモヤモヤしているので、
こうした夫婦の関係性であれば、
仮に事件が起こらなくても、
いつかは同じような悲劇が、
2人を襲い断絶に結び付いたのではないか、
というようには思われます。
主人公の夫婦が、
演劇の舞台でも夫婦を演じていて、
映画とミラーの戯曲は、
それほど綺麗にシンクロしているとは思えないのですが、
夫婦関係は壊れていても、
その外見は維持し続けなければいけない、
という辺りの心情を、
舞台にすることで巧みに視覚化していたと思います。
演技や演出のクオリティも高く、
面白い映画だったと思います。
そこそこのお薦めです。
今日もう1本演劇の記事があります。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
朝は選挙に行き、
夕方までは家にいて、
夜は「ゴキブリコンビナート」の本公演に、
わざわざお金を払って、
ひどい目に遭いに行きます。
汚れても良い服と合羽、
汚い靴を揃えて臨戦態勢です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
今年の米アカデミー外国語映画賞に輝いた、
イランのアスガー・ファルハディ監督による新作映画を観て来ました。
イランのテヘランが舞台になっていますが、
日本の高度成長期に近いような都市生活が描かれていて、
全く違和感はありません。
内容はある若いインテリの夫婦の関係性が、
ある事件をきっかけとして、
その根底から崩れてしまうという物語で、
そこにアーサー・ミラーの「セールスマンの死」を、
絡めてある辺りが面白く、
事件自体は妻が正体不明の人物に襲われて負傷する、
というもので、
その真相を夫が追求する段取りや、
後半に設けられた密室劇的なサスペンスは、
ヒッチコックの映画を彷彿とさせます。
巻頭、工事で自宅の高層アパートが崩れそうになるのを、
長回しで捉えた緊迫感も良いですし、
妻が襲われるシークエンスは、
静かに開かれたドアだけで暗示したり、
ラストは一転演劇を思わせる密室での、
緊迫した遣り取りと意外な展開も面白いと思います。
イラン映画ということで、
理解にややハードルが高いことを覚悟して観たのですが、
意外に語り口は親切で分かりやすく、
物語も謎めいていて魅力的なので、
グイグイと引き込まれます。
ラスト辺りの展開をどう感じるかで、
この作品の好き嫌いは分かれるという気がします。
人間が人間を罰することは出来ない、
というのがテーマの1つであることは間違いがないと思うのですが、
夫が悪いことは事実としても、
男の立場から見ると、
被害者の妻のその後の言動も、
あまりに一貫性がなくモヤモヤしているので、
こうした夫婦の関係性であれば、
仮に事件が起こらなくても、
いつかは同じような悲劇が、
2人を襲い断絶に結び付いたのではないか、
というようには思われます。
主人公の夫婦が、
演劇の舞台でも夫婦を演じていて、
映画とミラーの戯曲は、
それほど綺麗にシンクロしているとは思えないのですが、
夫婦関係は壊れていても、
その外見は維持し続けなければいけない、
という辺りの心情を、
舞台にすることで巧みに視覚化していたと思います。
演技や演出のクオリティも高く、
面白い映画だったと思います。
そこそこのお薦めです。
今日もう1本演劇の記事があります。