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パッチ型インフルエンザワクチンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
パッチ型インフルエンザワクチンの効果.jpg
2017年6月のLancet誌にウェブ掲載された、
皮膚にパッチとして貼るタイプのインフルエンザワクチンの、
効果と安全性についての論文です。

痛くないインフルエンザワクチンの開発というのは、
一般の接種者のニーズも非常に高い分野ですが、
一時もてはやされた点鼻の生ワクチンは、
接種者がかなり限られる上に、
その効果にも疑問符が投げかけられるなど、
なかなか一筋縄ではいかないのが、
ワクチンの接種法であるようです。

今回ご紹介するのは肌に張り付けるパッチ型のワクチンで、
こう書くと湿布のようなものを想像されるかも知れませんが、
実際には微小は針が沢山埋め込まれたパッチで、
肌に極小さな傷を付けて接種するという手法で、
日本で行われているBCGワクチンの考え方に近いものです。

こちらをご覧下さい。
パッチ型のインフルエンザワクチン.jpg
これが今回の臨床試験で使用されている、
パッチ型のインフルエンザワクチンです。

絆創膏のようなものの中央に、
極小の針が沢山付いていて、
そこにワクチン抗原がしみ込んでいます。
これを自分の効き手でない方の手首に押し付け、
20分そのままにした上で、
パッチを外します。
殆ど痛みはありません。
接種した当日からその摂取部位は赤く腫れ、
その腫れは徐々に落ち着いて、
4週間後には完全に見えなくなります。

今回の臨床試験では、
18歳から49歳の100名を、
クジ引きで4つの群に分け、
第1群は医療従事者がパッチ型ワクチンを接種し、
第2群は通常の筋肉注射(海外ではこれ)でワクチンを接種、
第3群は偽のパッチを医療従事者が接種、
第4群は接種者自身がパッチ型ワクチンを接種して、
その副反応や有害事象と、
4週間後の抗体価の上昇を比較検証しています。

その結果…

パッチ型ワクチンの抗体価の上昇効果は、
注射によるワクチンと同等で、
偽ワクチンとは明確な差があり、
接種者自身による接種でも、
パッチ型ワクチンの効果は変わりませんでした。

接種の副反応や有害事象は、
パッチ型ワクチンでは接種部位の発赤やかゆみが主で、
概ね軽症のものでした。
また有害事象は接種者自身の接種でも、
特に差はありませんでした。

このようにパッチ型のワクチンは概ね注射と遜色のない効果があり、
理屈から言っても沢山の微小な針で、
BCGのように刺激をする訳ですから、
その有効性はむしろ勝っている可能性もあるのではないかと思います。
ただ、皮膚が弱い方には反応が長く残るので、
あまり向いていない可能性があるのと、
20分は固定するという手法は、
小さなお子さんにはむしろ不向きであるようにも思います。

今後実際のインフルエンザ感染の予防効果を含めて、
臨床試験の推移を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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