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新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの血栓症リスクの違い [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナとインフルエンザの血栓症リスク.jpg
JAMA誌に2022年8月16日掲載された、
新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの、
急性期の血栓症リスクを、
動脈系と静脈系に分けて比較した論文です。

新型コロナウイルス感染症の罹患後3か月程度の時期には、
全身の血栓症のリスクが増加することが知られています。
その中には動脈系の血栓症である、
心筋梗塞や虚血性梗塞と、
静脈系の血栓症である、
深部静脈血栓症や肺塞栓症が含まれています。

ただ、インフルエンザのような他の流行性ウイルス感染症においても、
そうした指摘はあり、
実際にインフルエンザなどの場合と比較して、
血栓症のリスクにどのような差があるのか、
というような点については、
あまり明確な知見がありませんでした。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
新型コロナウイルス感染症で入院した85637名と、
季節性インフルエンザに感染して入院した8269名の、
入院後90日以内の血栓症の発症リスクを、
新型コロナではワクチン導入前と導入後に分け、
血栓症は動脈系(急性心筋梗塞と虚血性梗塞)と、
静脈系(深部静脈血栓症と肺塞栓症)とに分けて、
その違いを比較検証しています。

その結果、
動脈系の血栓症リスクには新型コロナとインフルエンザとの間に、
有意な差は認められませんでしたが、
静脈系の血栓症リスクについては、
インフルエンザと比較して新型コロナウイルス感染症では、
新型コロナワクチン導入前で1.60倍(95%CI:1.43から1.79)、
ワクチン導入後で1.89倍(95%CI:1.68から2.12)、
それぞれ有意に増加していました。

このように、
新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザと比較して、
罹患後3か月以内の急性期に、
特に静脈系の血栓症のリスクがより高く認められていて、
こうした違いの理由は現時点では不明ですが、
両者の感染症の罹患後には、
その違いも意識した管理が今後は必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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