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母親の妊娠中の抗精神薬使用と子供の成績との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗精神病薬の使用と学校の成績.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年8月15日ウェブ掲載された、
妊娠中の抗精神病薬の使用が、
生まれたお子さんの学校の成績に与える影響についての論文です。

抗精神病薬は、
主に脳のドパミン作動神経の働きを抑制する作用を持つ薬で、
強い鎮静作用や抗幻覚妄想作用を持ち、
統合失調症のみならず、
双極性障害や不安障害、うつ病などの治療にも、
広く使用されている薬剤です。

そのため抗精神病薬を使用しながら、
妊娠出産する女性の数も増え、
国と地域にもよりますが、
妊娠女性の0.3から4.6%が抗精神病薬を使用している、
という報告があります。

ただ、抗精神病薬の多くは胎盤を通過して、
胎児の脳にも影響を与えます。
脳のドパミン作動神経を抑制することは、
正常な脳の発達に悪影響を与える可能性が否定出来ません。

しかし、その実際の影響がどの程度のものなのか、
という点については、
これまでの臨床データは、
量質ともに充分なものとは言えませんでした。

今回の研究は国民総背番号制の取られているオランダにおいて、
1997年から2009年に生まれた667517名の小児を対象としたもので、
そのうちの0.2%に当たる1442名が、
妊娠中に母親が抗精神病薬を使用していました。
その後日本の小中学校に当たる4から12歳で施行された、
語学や数学の共通試験の成績を比較検証したところ、
学校の成績と母親の妊娠中の抗精神病薬の使用との間には、
明確な関連は認められませんでした。

つまり、止むを得ず母親が妊娠中に抗精神病薬を使用していても、
トータルに見て思春期前のお子さんの知能の発達には、
明確な影響はなかった、という結果です。

この結果のみで妊娠中の抗精神病薬の使用が、
無害であるとは言い切れませんが、
止むを得ない事情により投薬を妊娠中も継続された方にとっては、
安心を与える結果であることは間違いがなく、
今後もこうした検証は継続的に施行される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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