Bunkamura Production 2024 「台風23号」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
赤堀雅秋さんの新作が、
Bunkamura Productionとして、
新宿歌舞伎町のTHEATER MILANO-Zaで上演されています。
作演出の赤堀さんは、
現代を代表する劇作家の1人で、
常に今の時代と無骨にやや不器用に、
それでいて途方もない熱量で、
闘い組み合うような作品を発表されています。
また、役者としても非常に評価が高く、
その癖のある個性的な演技は、
松尾スズキさんや唐先生のような、
所謂「座長芝居」とは、
一線を画するリアルな演技の名手でもあります。
赤堀さんの実際に観た作品の中では、
「鳥の名前」と「流山ブルーバード」が好きです。
ちょっとオールビーを彷彿とさせるような、
少しブラックで暴力的な家庭劇がなかなかの完成度で、
ちょっと頭のネジが少し外れているような、
異様なキャラクターが魅力です。
ただ、それとは別に、
かなり前衛的でシュールで、
時事ネタや社会性のあるような作品も描いていて、
そちらは正直苦手ジャンルです。
2024年の春に本多劇場で「ボイラーマン」というお芝居があり、
少し新傾向と言うのか、
リアルに顕微鏡的な視点で食い詰めたような街の風景を描きながら、
現代社会を俯瞰的に表現したような作品でした。
今回の「台風23号」も、
基本的には「ボイラーマン」の系譜に連なるもので、
田舎の寂れた田舎町の風景をリアルに描きながら、
そこに崩壊する日本社会の縮図のようなものを、
浮かび上がらせるという作風でした。
かつてない規模の台風23号が上陸するという情報が流れ、
町の人はそのために精一杯の準備をし、
楽しみにしていた花火大会も中止にするのですが、
実際には台風の被害は起こることはなく、
楽しみも失った、虚しい日常が戻るだけです。
鬱屈した人間達の点描的なスケッチが、
一見無雑作に並べられ、
それが1つの死の引き金を引こうとした瞬間、
「花火」のような何かの音が町に響き渡ります。
それは救いの音だったのでしょうか?
それとも破滅への狼煙であったのでしょうか?
説明されないままに物語は終わります。
意欲的な作品でしたが、
THEATER MILANO-Zaという劇場は、
この濃密な人間ドラマの上演には、
やや大き過ぎるような感じはありました。
また、「ボイラーマン」のでんでんさんのような、
強烈なキャラクターがこの作品には不在で、
自分で捌け口のない怒りのためにばらまいたゴミが、
善意の住民たちによって回収されるというような、
決定的な場面も欠いていたので、
「ボイラーマン」に比べると、
そのインパクトにおいても弱いものがありました。
そんな訳で少しガッカリではあったのですが、
キャストは皆好演で、
港町の緻密でリアルなセットも見ごたえがありました。
キャストのファンの方であれば、
そう失望はしない仕上がりであったと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
赤堀雅秋さんの新作が、
Bunkamura Productionとして、
新宿歌舞伎町のTHEATER MILANO-Zaで上演されています。
作演出の赤堀さんは、
現代を代表する劇作家の1人で、
常に今の時代と無骨にやや不器用に、
それでいて途方もない熱量で、
闘い組み合うような作品を発表されています。
また、役者としても非常に評価が高く、
その癖のある個性的な演技は、
松尾スズキさんや唐先生のような、
所謂「座長芝居」とは、
一線を画するリアルな演技の名手でもあります。
赤堀さんの実際に観た作品の中では、
「鳥の名前」と「流山ブルーバード」が好きです。
ちょっとオールビーを彷彿とさせるような、
少しブラックで暴力的な家庭劇がなかなかの完成度で、
ちょっと頭のネジが少し外れているような、
異様なキャラクターが魅力です。
ただ、それとは別に、
かなり前衛的でシュールで、
時事ネタや社会性のあるような作品も描いていて、
そちらは正直苦手ジャンルです。
2024年の春に本多劇場で「ボイラーマン」というお芝居があり、
少し新傾向と言うのか、
リアルに顕微鏡的な視点で食い詰めたような街の風景を描きながら、
現代社会を俯瞰的に表現したような作品でした。
今回の「台風23号」も、
基本的には「ボイラーマン」の系譜に連なるもので、
田舎の寂れた田舎町の風景をリアルに描きながら、
そこに崩壊する日本社会の縮図のようなものを、
浮かび上がらせるという作風でした。
かつてない規模の台風23号が上陸するという情報が流れ、
町の人はそのために精一杯の準備をし、
楽しみにしていた花火大会も中止にするのですが、
実際には台風の被害は起こることはなく、
楽しみも失った、虚しい日常が戻るだけです。
鬱屈した人間達の点描的なスケッチが、
一見無雑作に並べられ、
それが1つの死の引き金を引こうとした瞬間、
「花火」のような何かの音が町に響き渡ります。
それは救いの音だったのでしょうか?
それとも破滅への狼煙であったのでしょうか?
説明されないままに物語は終わります。
意欲的な作品でしたが、
THEATER MILANO-Zaという劇場は、
この濃密な人間ドラマの上演には、
やや大き過ぎるような感じはありました。
また、「ボイラーマン」のでんでんさんのような、
強烈なキャラクターがこの作品には不在で、
自分で捌け口のない怒りのためにばらまいたゴミが、
善意の住民たちによって回収されるというような、
決定的な場面も欠いていたので、
「ボイラーマン」に比べると、
そのインパクトにおいても弱いものがありました。
そんな訳で少しガッカリではあったのですが、
キャストは皆好演で、
港町の緻密でリアルなセットも見ごたえがありました。
キャストのファンの方であれば、
そう失望はしない仕上がりであったと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2024-10-27 22:47
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コメント(1)
石原さんの演劇評をたのしみにしています。
此の芝居、それぞれの役者ファンには不人気ようで、リセールで半額チケットを手に入れて観に行ってきました。
私はチェーホフ味を感じました。衰亡の悲劇なんだけど喜劇。
by 叡 (2024-10-31 14:38)