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城山羊の会「平和によるうしろめたさの為の」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
城山羊の会.jpg
大好きな城山羊の会の新作公演が、
今下北沢の小劇場B1で上演されています。

この会場はかつて傑作「自己紹介読本」が上演された劇場で、
その強烈な印象は今でも脳裏に焼き付いています。
今はすっかり全国区となった岡部たかしさんの、
ファンになったのもあのお芝居でした。

城山羊の会は多くの劇場で公演を行っていますが、
個人的にはその淫靡で密やかなニュアンスが、
最も的確に発揮されるのは、
小劇場B1のような小空間ではないかと思います。

今回のお芝居は岩谷健司さんが出演されないのだけが、
少し残念ではありますが、
岡部たかしさんや岩本えりさんのお馴染み組に、
こちらも今をときめく中村歩さん、
ベテランの古館寛治さん、
隠し玉的ヒロインの笠島智さん、福井夏さん、
という充実した布陣です。

内容は複雑に人間関係が絡み合う、
城山羊の会ならではの艶笑譚ですが、
基本的には「自己紹介読本」を、
より分かり易くして、
最後にはそこから一ひねりしている、
という趣向の作品になっていました。

このところシュールで非現実的な趣向を持った作品が多かったのですが、
今回の作品にはそうした要素はなく、
リアルな世界の話がリアルなままに着地しています。

血縁や愛情で複雑に関係のもつれあった6人の男女が、
おそらくは「自己紹介読本」と同じ都会の公園で、
「出会ってしまう」という物語で、
観客は神様視点でその物語を、
舞台を取り囲んで鑑賞するのですが、
舞台上の役者陣の持つ「うしろめたさ」が、
次第に観客にも伝染して来る、
という辺りに作者の企みがありそうです。

リアルな現代の物語という体裁ですが、
もっと根源的な、ギリシャ悲劇に近い味わいがあります。
ラストに感情を剥き出しにした人物が、
顔に紙袋を被せられてベンチに縛り上げられる光景には、
初めに言い訳のように語られていた、
遠い国の虐殺や戦争の悲劇が、
ふいに身近に引き寄せられたような恐怖が感じられます。

人間の愚かさは根源的で、
見掛け上大きく見えても小さく見えても、
1つの平面上に存在している、
ということなのではないかと思います。

ただ、この作者としてはやや真面目に踏み込んだ感じがあって、
勿論愚かしさ全開の男どもの大暴れや愚行の数々、
シンプルでストレートな性的表現など、
遊びの要素もふんだんにはあるのですが、
基調音はかなり重いな、
という印象を受けました。

基本観客神様視点で描かれていて、
愚かな登場人物の右往左往を、
「ああ、そんなことをしなければいいのに」
とハラハラしながら見守る、という感じの展開です。
そのため「自己紹介読本」にあった、
秘められていた意外な感情が暴露される、
というような、観客が驚くような部分はありません。
それはもうこうした作品なので仕方がないことなのですが、
個人的には少し残念ではありました。

いずれにしても城山羊の会のファンの方には、
文句なくお勧め出来る逸品であることは確かで、
貴重な機会を是非お見逃しないようにして下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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