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アセトアミノフェンの有害事象リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは本日まで、
年末年始の休診期間となります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アセトアミノフェンの副作用リスク.jpg
Arthritis Care & Research誌に、
2024年11月24日付で掲載された、
臨床において最も広く使用されている、
鎮痛剤の安全性についての論文です。

関節痛や腰痛などの疼痛の治療薬として、
最も広く使用されている薬剤はアセトアミノフェンです。
商品名ではカロナールやアンヒバなどがそれに当たります。

この薬は鎮痛剤の中では、
使用による有害事象やリスクの少ない薬剤として知られています。
アセトアミノフェン以外の鎮痛剤は、その使用に伴い、
消化性潰瘍や腎障害、心血管疾患やライ症候群など、
多くの有害事象が知られていますが、
アセトアミノフェンはそうした有害事象は、
肝障害以外は稀だと考えられています。

そのため特に内臓機能が低下している高齢者では、
安全性の高いアセトアミノフェンが、
第一選択の薬として選ばれることが多いと思います。

しかし、アセトアミノフェンの使用においても、
他の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用時と同様に、
消化管出血や心血管疾患のリスクが、
少なからず存在する、
という報告も認められています。

実際はどうなのでしょうか?

今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの臨床データを活用して、
65歳以上の年齢で、
関節痛などの症状に対して、
アセトアミノフェンを使用した場合の、
出血などのリスク増加を、
未使用の場合と比較検証しています。

対象は半年以内に2回以上アセトアミノフェンを使用した180483名と、
未使用の402478名です。

その結果、
アセトアミノフェンの使用により、
胃潰瘍などの出血のリスクが24%(95%CI:1.16から1.34)、
下部消化管出血のリスクが36%(95%CI:1.29から1.46)、
心不全のリスクが9%(95%CI:1.06から1.13)、
高血圧のリスクが7%(95%CI:1.04から1.11)、
慢性腎障害のリスクが19%(95%CI:1.13から1.24)、
それぞれ有意に増加していました。

このように、
今回の実地臨床での大規模なデータにおいては、
安全とされていたアセトアミノフェンの使用においても、
65歳以上の年齢層において、
消化管出血や心血管疾患などの有害事象のリスクが、
少なからず認められていました。

これは関節痛の治療に限った話ですが、
痛み止めとしての有効性が見劣りがする、
という点も加味して考えると、
これまでの高齢者の痛み止めにはアセトアミノフェンが第一選択、
という考え方は、
臨床的には再考する必要があるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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