SSブログ

デスクワークで座位時間を減らす試みの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デスクワークで座る時間を減らす試み.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年8月17日ウェブ掲載された、
オフィスワークでの、
運動不足を改善する取り組みの効果についての論文です。

現在の労働は二分化されていて、
身体を使って仕事をする人は労働時間の殆どで運動していますが、
オフィスや在宅で仕事をしている多くの人は、
労働時間の殆どを座って過ごしています。

ただ、1日の多くの時間を座って過ごすことは、
総死亡のリスクの増加や、
糖尿病や癌や心血管疾患のリスクの増加に繋がることが、
多くの疫学データにおいて示されています。

つまり、座る時間が長いほど、
健康には悪影響を与えることになるのです。

それでは、デスクワークにおいて、
座位時間を減らすには、
どのようにすれば良いのでしょうか?

上記論文の著者らは、
SWALという介入プログラムを開発し、
その臨床導入を行っています。
これは労働者にビデオなどで教育を行い、
共有スペースからイスをなくしたり、
立って行うミーティングを導入するなどして、
仕事中の座位時間を減らそうとするものです。
それに加えて今回の研究では、
自由にその高さを変えられる机を導入して、
その有効性も同時に検証しています。
こうした机は立った姿勢で仕事が出来、
疲れたら座っても仕事が出来るように工夫されたものです。

対象は殆どの時間を座って仕事をしている、
756名のオフィスワーカーで、
特に何も介入はしない場合と、
SWALのプログラムを導入した場合、
そしてSWALに加えて、
高さを自由に変えられる机を導入した場合の、
12か月継続の影響を比較検証しています。

その結果、12か月に渡り介入を継続することにより、
SWALのプログラム単独で1日22.2分(95%CI:-38.8から-5.7)、
それに高さ自由の机を併せると1日63.7分(95%CI:-80.1から-47.4)、
それぞれ有意に平均の座位時間は短縮していました。

それによる血圧や血糖など、
生活習慣病のリスクなどについての指標は、
明確な変化は認められませんでしたが、
ストレスの指標はやや軽減し、
下肢の疼痛は改善が認められました。

このように、適切な介入や器具を使用することにより、
デスクワークにおける座位時間は短縮可能で、
今後こうした介入の効果をより長期検証して、
明確な健康改善効果の確認に、
繋がることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)