経口抗菌薬と重症薬疹リスク [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2024年8月8日付で掲載された、
重症の薬の副作用と、
飲み薬の抗菌薬との関連についての論文です。
薬の副作用として最も起こり易いものの1つが、
皮膚に起こる蕁麻疹などのアレルギー性の変化です。
こうした変化が出た場合には、
速やかに原因となる薬を中止することにより、
症状は改善することが多いのですが、
中には重症な皮膚の変化や内臓の障害を伴って、
緊急入院が必要となったり、
命に関わる深刻な事態となることもあります。
その代表的な病気が、
スティーブンス・ジョンソン症候群や、
中毒性表皮壊死融解症と呼ばれる重症薬疹で、
全身に水疱が生じて皮膚が壊死し、
致死率も高いという深刻な病態です。
特に高齢者では、そのリスクも高く、
重症化も多いことが知られています。
勿論原因となる薬が予め分かっていれば、
それを使わなければ良いだけの話ですが、
同じ薬を同じように使用していても、
起こる人と起こらない人がいますし、
その頻度は多くはないことは確かで、
大半の方には安全に使用可能な薬が殆どであるのが、
この問題の厄介なところです。
それでも、重症薬疹を来しやすい薬というものはあり、
その代表の1つが細菌感染などの治療薬である、
抗菌薬(抗生物質を含む)です。
ただ、多くの種類の抗菌剤がある中で、
重症薬疹のリスクを比較したようなデータは、
あまり存在していません。
そこで今回の研究では、
カナダのオンタリオ州の医療データを活用して、
少なくとも年1回経口抗菌薬の処方歴のある、
65歳以上の高齢者で、
処方後60日以内に重症の薬疹を来して、
救急医療機関を受診もしくは入院した、
トータル21758名の一般住民を、
年齢などをマッチングした67025名のコントロール群と比較して、
薬剤毎のリスクを検証しています。
抗菌剤の処方期間の中間値は7日間
(四分位範囲7から10日)で、
処方から受診までの期間の中間値は14日間
(四分位範囲7から35日)でした。
検証の結果、
クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬と比較して、
最も重症薬疹リスクが高かったのは、
スルホンアミド系抗菌薬
(日本での使用はゲーベンクリームとサラゾピリン、バクタなど)
でそのリスクは2.9倍(95%CI:2.7から3.1)と最も高く、
次に高かったのはセファロスポリン系抗菌薬
(ケフレックス、バナン、トミロンなど多数)
でそのリスクは2.6倍(95%CI:2.5から2.8)でした。
特に日本の処方では、
セファロスポリン系抗菌薬は使用頻度の高い薬剤なので、
その使用時には患者さんの背景から、
薬疹のリスクを想定し、
必要性の高い事例のみに使用を留めるなど、
より慎重な対応が必要と考えられます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
(付記)コメントでご指摘を受け、スルホンアミド系抗菌剤に、
バクタを追加しました。(2024年8月31日午前6時24分修正)
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2024年8月8日付で掲載された、
重症の薬の副作用と、
飲み薬の抗菌薬との関連についての論文です。
薬の副作用として最も起こり易いものの1つが、
皮膚に起こる蕁麻疹などのアレルギー性の変化です。
こうした変化が出た場合には、
速やかに原因となる薬を中止することにより、
症状は改善することが多いのですが、
中には重症な皮膚の変化や内臓の障害を伴って、
緊急入院が必要となったり、
命に関わる深刻な事態となることもあります。
その代表的な病気が、
スティーブンス・ジョンソン症候群や、
中毒性表皮壊死融解症と呼ばれる重症薬疹で、
全身に水疱が生じて皮膚が壊死し、
致死率も高いという深刻な病態です。
特に高齢者では、そのリスクも高く、
重症化も多いことが知られています。
勿論原因となる薬が予め分かっていれば、
それを使わなければ良いだけの話ですが、
同じ薬を同じように使用していても、
起こる人と起こらない人がいますし、
その頻度は多くはないことは確かで、
大半の方には安全に使用可能な薬が殆どであるのが、
この問題の厄介なところです。
それでも、重症薬疹を来しやすい薬というものはあり、
その代表の1つが細菌感染などの治療薬である、
抗菌薬(抗生物質を含む)です。
ただ、多くの種類の抗菌剤がある中で、
重症薬疹のリスクを比較したようなデータは、
あまり存在していません。
そこで今回の研究では、
カナダのオンタリオ州の医療データを活用して、
少なくとも年1回経口抗菌薬の処方歴のある、
65歳以上の高齢者で、
処方後60日以内に重症の薬疹を来して、
救急医療機関を受診もしくは入院した、
トータル21758名の一般住民を、
年齢などをマッチングした67025名のコントロール群と比較して、
薬剤毎のリスクを検証しています。
抗菌剤の処方期間の中間値は7日間
(四分位範囲7から10日)で、
処方から受診までの期間の中間値は14日間
(四分位範囲7から35日)でした。
検証の結果、
クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬と比較して、
最も重症薬疹リスクが高かったのは、
スルホンアミド系抗菌薬
(日本での使用はゲーベンクリームとサラゾピリン、バクタなど)
でそのリスクは2.9倍(95%CI:2.7から3.1)と最も高く、
次に高かったのはセファロスポリン系抗菌薬
(ケフレックス、バナン、トミロンなど多数)
でそのリスクは2.6倍(95%CI:2.5から2.8)でした。
特に日本の処方では、
セファロスポリン系抗菌薬は使用頻度の高い薬剤なので、
その使用時には患者さんの背景から、
薬疹のリスクを想定し、
必要性の高い事例のみに使用を留めるなど、
より慎重な対応が必要と考えられます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
(付記)コメントでご指摘を受け、スルホンアミド系抗菌剤に、
バクタを追加しました。(2024年8月31日午前6時24分修正)
2024-08-28 16:57
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コメント(3)
いつも勉強になる投稿をありがとうございます。
スルホンアミド系抗菌薬にバクタが含まれないのか気になりました。
by 内科医 (2024-08-29 13:18)
内科医様
ご指摘ありがとうございます。
取り急ぎバクタ記載追加しました。
by fujiki (2024-08-31 06:36)
石原先生、ありがとうございました。
もしバクタに皮疹のリスクがなければ、意外な結果だったのですが。
by 内科医 (2024-09-03 11:28)